1993年 ドイツGP


1993年7月23-25日
ドイツ ホッケンハイムリンク

予選:4位 決勝:4位


6月のカナダGPの予選終了後、カナダGP審査委員会はローラ以外のマシンの アクティブサスペンションとトラクションコントロールが技術規則に違反しているとの決定を下した。 このときは出走を認められたが、これでハイテク禁止・レギューション改正へ一気に加速した。

そしてドイツGP前の7月15日、パリでFISA世界評議会が開かれ、 以後のレースからアクティブサスペンションとトラクションコントロールの使用を禁止すると発表した。 これに対しチーム側は反対したため、妥協策を取り93年シーズンに限り使用を許可するということで合意した。

メカニズムにも強いセナは、人間の能力の違いを反映せずに機械が自動的・画一的に作動してしまうハイテクには反対しつつも、 一度確立された技術を制限し、後退させるようなことも好きではなかったようだ。

元ホンダの総監督でその後も信頼関係で結ばれていた桜井淑敏氏はそんなセナを「宇宙飛行士タイプ」と評していた。 それはセナの、ドライビング能力的にも機械技術的にも常に限界、 そして現状に満足せずさらなる高い次元を目指していたことを表していたのかもしれない。



舞台裏ではF1の存続に関わるような話し合いが行われていたが、何事もなかったかのようにドイツGPは開幕していった。 金曜午前のフリー走行でセナは第1シケインでスピンした後にエンジンをストールしてしまい、セッティングが遅れる。 午前は16位、そして午後の予選1回目では5位まで回復するが、まだマシンは本調子ではないようだ。

土曜日になるとセッティングが決まってきたようでエンジンも調子がよくなってきたようだ。 最後にシューマッハー(ベネトン)に逆転されるものの、僅差で4位。 このレースからマクラーレンにもベネトンと同じフォードV8シリーズⅧが搭載されるようになったが、 まだまだシャシー性能ではベネトンに分があるようだ。

決勝レースでは、PPのプロスト(ウイリアムズ)がスタートに失敗して3位に落ちる。 しかしそのことがセナにも影響する。 セナは抜群の加速を見せ第1シケインでプロストと並ぶように進入。 しかしともに譲らずセナは行き場をなくし、マシン左側をグラベルに落としてスピン。 セナは全車がシケインを通過してから見事なスピンターンを見せレースに復帰していく。 セナは後に「接触したかはわからないけど、二人とも限界を超えていた」と語っている。

一方のプロストは、うまくマシンを立て直し3位を死守。 しかし第2シケインで混乱を避けようとコースをショートカット。 さらにこのことがペナルティの対象となり、プロストも大きく順位を落としてしまう。

セナは最後尾・24位から地道に一台一台をかわしていく。 2周目には一気に3台を抜き、その後も1周につき1~2台をパスしていく。 そして8周目には10位にまで上がった。

セナは14周目にポイント圏内まであと一歩という7位まで上昇してきた。 ここまで順調に順位を上げてきたが、ここで昨年までの同僚であるベルガー(フェラーリ)に引っかかる。 1周のペースはセナのほうが速いが、ストレートではV12エンジンを擁するフェラーリが速かった。 ただこの2人、特にベルガーはセナとのバトルを楽しんでいるようにも見えた。

しかしセナもいつまでもベルガーとのバトルに付き合っているわけにもいかない。 セナは現状打開策として21周目にタイヤ交換のためピットイン。 ここでマクラーレンピットは4.81秒という素晴らしいタイムでセナをコースに送り出した。

セナはその後は特に大きなバトルをすることもなく、着実に周回を重ねていく。 しかしベルガーなどのライバルがピットインする間に自動的に順位が5位まで浮上した。

セナは残り5周となったところで再びタイヤを交換する。
「マシンの挙動がおかしくなった。とにかく時速300kmでパンクするのだけは避けたかった。」  (「生涯 アイルトン・セナ」より)

そんなセナの言葉を裏付けるかのように、 初優勝に向けてトップを走っていたヒル(ウイリアムズ)は残り2周というところでタイヤバーストを起こし、 3輪でユルユルと走行しピットロードでスピンしてしまった。

これで順位が一つずつ繰り上がり、気がつけばプロストが優勝。通算51勝目はしかし、結果的に彼の最後の優勝になってしまう。 ちなみにこのレースで不本意ながらペナルティを受けたことで、引退への想いが芽生え始めたという。

セナは最後尾から4位までジャンプアップしレースを終えた。 ストレートで遅く、マシンの状態もよくなかったとはいえ、 後方から追い上げるといういつもとは一味違う見応えのあるレースだったと言えるかもしれない。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 アラン・プロスト  ウイリアムズ・ルノー  1'38"748
2位
 デイモン・ヒル  ウイリアムズ・ルノー  1'38"905
3位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'39"580
4位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・フォード  1'39"616
5位
 マーク・ブランデル  リジェ・ルノー  1'40"135
6位
 マーティン・ブランドル  リジェ・ルノー  1'40"855


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 アラン・プロスト  ウイリアムズ・ルノー  1゚18'40"855
2位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1゚18'57"549
3位
 マーク・ブランデル  リジェ・ルノー  1゚19'40"234
4位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・フォード  1゚19'49"114
5位
 リカルド・パトレーゼ  ベネトン・フォード  1゚20'12"401
6位
 ゲルハルト・ベルガー  フェラーリ  1゚20'15"639
 
     
FL
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'41"859




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