80年代終盤から90年代序盤にかけて、
フジテレビのF1中継は番組本編やオープニング、エンディングなどにもちょっとした演出を加え、
玄人ファンはもちろん、初めてF1を見た人をも捕まえて離さないほどの魅力を有していた。
その魅力的な演出に一役買っていたのが、番組中に使用されていたテーマ曲である。
ここでは1990~94年くらいまでにF1中継で使用されたテーマ曲を中心にまとめてみようと思う。 日本におけるF1の、いやモーターレースのテーマ曲として定着したのが、 オープニングで流れる「TRUTH」(T-SQUARE)である。 「TRUTH」は「TRUTH21c」、 「TRUTH Drum’n Bass Mix」としてリミックスされ、現在も使用されている。 また1999~2000年には「GO FURTHER」(松本孝弘)がオープニングテーマ曲として使われた。 それぞれの良さがあったが、 やはりオリジナルの「TRUTH」を聴くと、 「これからレースが始まる!」という興奮した思いに駆られる。 スターティング・グリッド紹介時に流れる曲もインパクトがあった。 1990~93年にかけて流れていたのが、「危険濃度」という曲である。 この曲はアニメ「ドミニオン」オリジナルサウンドトラックに収録されている。 スタート前の緊張感を醸し出し、見ているほうも静かに燃えてくるようなナンバーである。 1993~94年には「Battle For The Championship」(大橋 勇)が使用された。 「危険濃度」ほどの緊張感はないが、ポップな感じでスタート前の臨場感を演出している。 さらに1992~93年には決勝レースのゴール直後に、 優勝したドライバー毎にテーマ曲が流れていた。 セナのテーマ曲は「FACES」(T-SQUARE)。 ポップ調の中にもどことなく哀愁さが感じられ、 セナにぴったりのテーマ曲であった(と、勝手に解釈しています…) F1ファンの中では「FACES」をセナとからませて聴いていますが、 純粋なT-SQUAREのファンの中でも評判が高い曲のようである。 また、「TRUTH 21c」のカップリング曲の「THE FACE」は、 この「FACES」のリミックス・バージョンである。
ちなみに他の主なドライバーのテーマ曲は… レースをうまくきれいにまとめて勝つプロスト、 勢い出したら止まらない熱い走りのマンセル、 ベテラン強豪ドライバーに食ってかかる若武者シューマッハー、といったように、 いずれもそれぞれの特徴に合った(合わせた)テーマ曲だったと思う。 そして最後を締めくくるエンディング。 当初はエンディングにも「TRUTH」が使われていたが、 1990~92年にかけては「IN THIS COUNTRY」(ROBIN ZANDER)が流されていた。 英語の歌詞であり当初は何を言っているのかわからなかったが、 哀愁あるこの曲はその雰囲気だけで、 激しいレースの後の静けさを感動的に演出していたと思う。 1993~94年には「A LATCHKEY」(JUN SATO)が使用される。 ピアノ主体のボーカルなしの曲で、こちらもエンディングにふさわしい しみじみと心にしみる曲だったと思う。 後にこの「A LATCHKEY」は、セナ事故死後の追悼番組・イベント等で レクイエム(鎮魂歌)的に使用されることになる。 当時のF1中継は、レースの本質を伝えつつ、 さらに上記のようなそれぞれのシーンに合わせたテーマ曲を有効に活用し演出することで、 スポーツ中継という枠組みを越えて一種のドキュメント番組にまで昇華させていたと思う。 今後もフジテレビのF1中継にも、レースの本質と適度な演出をミックスしたような、 魅力的な番組になるように期待したい。
シューマッハーのテーマ曲「Good Morning Satellite」は、 「東映映画『ふうせん』オリジナル・サウンド・トラック盤 SHOOT THE GUITARIST」に収録されています。 DEAD ENDというグループの他のアルバムには同じ「Good Morning Satellite」という曲が収録されていますが、 こちらはボーカルありバージョンなのでご注意ください。
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