1985年 サンマリノGP


1985年5月3-5日
イタリア アウトドローモ・エンツォ・エ・ディノ・フェラーリ(イモラ)

予選:PP(2回目) 決勝:7位


前戦ポルトガルGPで初めてのPP、そして決勝でも大雨の難しいコンディションの中、 1度も首位を譲ることなくFLも記録して完全優勝を成し遂げた。 その勢いそのままにセナはサンマリノへ乗り込む。

金曜予選ではアルボレート(フェラーリ)との争いを制し暫定PP。 土曜になるとセナはレースタイヤで走りこみ、前日のタイムを0.2秒縮めた。 これで2戦連続でPPを決めたセナだったが、 思うようにタイムアップできなかったこともあり、それほどうれしそうな表情も見せずに淡々としている。 自分に厳しく完全主義…セナは常に自分自身の限界と戦っていたのかもしれない。

決勝レースでもセナが無難なスタートを切り、チームメイトのデ・アンジェリス(ロータス) やプロスト(マクラーレン)を従えてトップを守り周回を重ねていく。 デ・アンジェリスはブレーキに問題を抱えていて次第に離されていくが、 代わりにプロストが2位に浮上しセナにプレッシャーを与え始める。

そしてプロストはセナの背後にピタリとつけ、 タンブレロコーナーからスピードを乗せてビルヌーブコーナーでセナの前に出た。 しかしセナも負けじとすぐに巻き返し、次のトサコーナーでは逆にプロストを指し返しトップを死守した。 セナとプロスト…これが初めての直接対決だったのかもしれない。 後に10年近くに渡ってこのような光景が何度となく繰り返され、この2人が時代を作っていくことになる。

その後セナは周回遅れを難なく素早く処理していく一方で、 プロストはタンベイ(ルノー)に引っかかり、その間にセナは一気にプロストを引き離しにかかった。

「僕がプロストを引き離せたのは、エンジンをプッシュしたからじゃない。 プッシュしたのはエンジンじゃなくて、タイヤとブレーキだよ」
…驚くべきことにこの男は、燃料を保ちながらブレーキングを遅らせ、 タイヤを酷使することで「スピード」を見つけていた。  (クリストファー・ヒルトン「生涯 アイルトン・セナ」より)

燃料に厳しいイモラのコース。 セナも燃料を計算に入れながら首位を走り、レースをコントロールしていた。 終盤に入っても危なげない走りでこのままセナの2連勝かと思われたが、 しかし残り4周になったところで突然ガス欠に見舞われた。

「それ以前(プロストとの攻防)はプッシュしていない。 燃料が重かったからね。 その瞬間まで僕はすべてをセーブした。 勝負をかけたあとブーストを下げて、1000くらい回転数を落としたよ。 燃料をセーブしたかったからね。 問題なく優勝できると思った。 まさかガス欠になるなんて考えもしなかった」  (クリストファー・ヒルトン「生涯 アイルトン・セナ」より)

もしかしたら、ガソリン残量の計算が合わなかったのかもしれない。 少なくとも燃料を無視して無謀に走っていたわけではなく、 すべてを計算しつつ、同時にプロスト等と激しく戦っていたことがわかる。 ちなみにセナ脱落後に首位に立ったヨハンソン(フェラーリ)も同じくガス欠でストップ。 ピケ(ブラバム)もほぼ同じ時期にガス欠と、 全体的にレース前の予想以上に燃料を喰ってしまった。 現在のようにのコンピュータ・シュミレーションが発達していなかった当時では、 このような計算の狂いがしばしばあったのかもしれない。

さらにトップでゴールしたプロストも再車検で車重が軽すぎて失格となり、 二転三転して優勝はデ・アンジェリス、2位にはブーツェン(アロウズ)が初表彰台を決めた。 しかしデ・アンジェリスの方は翌年事故死してしまい、 これが最後の優勝となってしまった。

セナは残念ながら優勝は逃してしまったが、 ポルトガルで示した速さ・強さが偶然ではなかったことを証明した。 この年のロータス、特にナンバーツー扱いのセナの車には不運なトラブルが多発するが、 それでも天性の速さで才能を知らしめていくのだった。

ちなみにセナは、前年のサンマリノGPではタイヤメーカーのトラブルなどから生涯唯一の予選落ちを経験したが、 この年から7年連続でイモラでPPを記録し(同サーキット最多連続PP記録)、 最後のレースとなる94年のレースもPPから天に召されることになる。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 アイルトン・セナ  ロータス・ルノー  1'27"327
2位
 ケケ・ロズベルグ  ウイリアムズ・ホンダ  1'27"354
3位
 エリオ・デ・アンジェリス  ロータス・ルノー  1'27"852
4位
 ミケーレ・アルボレート  フェラーリ  1'27"871
5位
 テイリー・ブーツェン  アロウズ・BMW  1'27"918
6位
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1'28"099


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 エリオ・デ・アンジェリス  ロータス・ルノー  1゚34'35"955
2位
 テイリー・ブーツェン  アロウズ・BMW  1Lap
3位
 パトリック・タンべイ  ルノー  1Lap
4位
 ニキ・ラウダ  マクラーレン・TAGポルシェ  1Lap
5位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ホンダ  2Laps
6位
 ステファン・ヨハンソン  フェラーリ  3Laps、ガス欠で完走扱い
7位
 アイルトン・セナ  ロータス・ルノー  3Laps、ガス欠で完走扱い
 
     
FL
 ミケーレ・アルボレート  フェラーリ  1'30"961




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