前年、ドイツGPはニュルブルクで開催されていたが、
この年から現在に至るまで、その舞台はホッケンハイムに統一されることになる。 ドイツGP開幕前、1982年のワールドチャンピオンであるケケ・ロズベルグ(マクラーレン)が、 この年限りでの現役引退を表明した。 ロズベルグは豪快な走りと、古き良き自由人的な雰囲気でサーキットを沸かせた。 また一人、個性派レーサーが消えていってしまうことになる。 セナにとっては2年ぶり2度目のホッケンハイム。 金曜予選ではエンジントラブルが発生し8位。 土曜には問題が解消されバランスも向上していたが、 予選開始10分前に予選用マシンの燃料ポンプに欠陥が見つかる。 セナはとりあえずレースカーでアタックし13位のタイム。 一方ピットではエンジンを取り外し、燃料ポンプを取り換えて、 再びエンジンを取り付けるといった作業が行われていた。 そして予選終了5分前に作業が完了しセナはコースイン。 そしてメカニックの期待に応えるべく素晴らしい走りで、マクラーレン勢に僅差で続く3位のタイムを記録した。 PPはロズベルグ。引退を表明した直後にPPを奪うところなどは、いかにもロズベルグらしい。 決勝レースでは、スタートでセナが好ダッシュを決めマクラーレン2台の間に割って入り一気にトップに躍り出る。 しかしすぐにロズベルグ、ピケ(ウイリアムズ)、プロスト(マクラーレン)にかわされていく。 セナはその後、レースの大半を4位で走る。 上位3台は目まぐるしく順位を入れ替えていたが、終盤になって異変が生じる。 残り2周になってロズベルグがガス欠で後退、さらにプロストもガス欠に見舞われる。 セナもギリギリの燃料だったが、最後の1滴までガソリンをエンジンに送り込もうと、 マシンを左右に揺らしながらゴールまで導いた。 ガス欠になったプロストはマシンを降り、 その小さな体でコントロールラインまでマシンを押していたのが印象的だった。 ただがむしゃらに走るだけでなく、燃料やレース展開も計算する… ロータスはマクラーレンやウイリアムズに劣りながら、 セナは冷静と情熱を絶妙なバランスで両立して常に最善の走りをしていた。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ケケ・ロズベルグ | マクラーレン・TAGポルシェ | 1'42"013 |
2位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・TAGポルシェ | 1'42"166 |
3位 |
アイルトン・セナ | ロータス・ルノー | 1'42"329 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | ベネトン・BMW | 1'42"541 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ウイリアムズ・ホンダ | 1'42"545 |
6位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1'42"696 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ネルソン・ピケ | ウイリアムズ・ホンダ | 1゚22'08"263 |
2位 |
アイルトン・セナ | ロータス・ルノー | 1゚22'23"700 |
3位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1゚22'52"843 |
4位 |
ルネ・アルヌー | リジェ・ルノー | 1Lap |
5位 |
ケケ・ロズベルグ | マクラーレン・TAGポルシェ | 1Lap、ガス欠 |
6位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・TAGポルシェ | 1Lap、ガス欠 |
FL |
ゲルハルト・ベルガー | ベネトン・BMW | 1'46"604 |