1992年 オーストラリアGP


1992年11月6-8日
オーストラリア アデレード市街地コース

予選:2位 決勝:リタイア


苦しい戦いを強いられた92年シーズンもついに最終戦を迎えた。 そしてホンダにとっては第2期F1活動の最後のレースとなる。 前戦の鈴鹿では不発に終わったが、この最終戦に向けてホンダは改良を進めてきた。 パワーアップした鈴鹿スペシャルエンジンをストップ・アンド・ゴーのアデレード仕様に改良を施し、必勝を誓う。 セナもホンダに最後の1勝をと気合が入る。

92年シーズンは異次元のハイテクマシンを擁するウイリアムズのマンセルが予選・決勝共にグランプリを圧巻。 1周につきセナに平均1.5秒、ときには3秒近い差をつけていた。 しかしここアデレードでは金曜日からセナがマンセルに肉薄。 金曜予選では0.4秒差の2位。土曜予選では気温上昇と予選前に行われたサポートレースによりコースコンディションが悪化。 多くのドライバーがタイムを更新できなかったが、セナはこのセッションでトップタイムをマーク。 決勝レースに期待をのぞかせた。

決勝レースではPPのマンセルが好スタート。。 マンセルにとっても引退を表明し最後のF1レース(後に数戦復帰しているが…)で意地を見せる。 しかしいつものように独走態勢にはならず、セナがマンセルの背後にピタッとつく。

そして早くもオープニングラップのアデレードヘアピンでセナがマンセルのインに入った。 このときはオーバースピードでマンセルが再びセナの前に出るが、 以後もセナは1~2秒程の間隔でマンセルにプレッシャーを与え続ける。

19周目に入り周回遅れが出始めると、2人の間隔はさらに縮まり、 セナがいつでも仕掛けていけるという状況になっていた。 周回遅れを利用してセナが差を詰めたこともあるが、 マンセルもトラブルが発生したのではないかと思われるくらい動きが鈍いように感じられた。 そしてマンセルの加速がどこかぎこちないと感じられたその時、19周目の最終コーナー前でセナがマンセルに追突。 マンセルはコース外に押し出され、セナもウイングとタイヤを壊しながらコースアウトしていった。

セナ、マンセル共にコックピット内で両手を軽く上げ、「もうダメだ、なんてこった」といった仕草。 その後セナはマンセルに歩み寄り握手を求めようとした。 称え合ったり罵り合ったり…いろいろあった2人だが、F1を去るマンセルをセナは暖かく送り出そうとしたのだ。 しかしマンセルはセナを避けるようにコントロールタワーに向かう。

マンセルは、セナが突然オーバースピードで追突してきたと大会審査員に訴えた。 しかし大会審査員はビデオでそれまでの数周と比較し、 マンセルが急減速をしたようにも見られ、これはスポーツアクシデントの範疇であると判断した。

一方セナは大会審査員の判断を裏付けるように冷静に分析する。
「彼がいきなり早めのブレーキングをしたんだ。彼は僕が真後ろにいることがわかっていたはずなのに。 あれだけギリギリまで近づいていたから、避けることなんてできなかった。」 (「F1速報 1992年総集編」より)

レースは結局、ベルガー(マクラーレン)が燃費とエンジンの水温上昇の症状に苦しみながらもうまくレースをコントロールし、 追い上げてくるシューマッハー(ベネトン)を0.7秒差で振り切って優勝。 ホンダに通算71勝目をプレゼント。ホンダのラストランに花を添えた。

シューマッハーの2位入賞でセナのドライバーズランキングはマクラーレン加入後最低の4位に終わった。 しかしこれはマシントラブルによるリタイヤの多さによるところが大きく、 セナのドライビング自体はむしろ非常に完成度が高かったと思う。 異次元のウイリアムズのマシンに対して常に限界ギリギリの人間技で対抗。 モナコやドイツ、ベルギーなどで見せたドライビングは芸術の域に達し、セナへの評価は逆に高まったのではないかと思う。

ただ、勝つことが命題のセナにとっては苦しい92年シーズンだったことには間違いない。 ホンダがF1から去り、中心的なマシンデザイナー不足でシャシー開発に難がある マクラーレンも大幅な戦闘力アップが見込めない中、 セナは翌シーズンを走るか休養するか、93年開幕1週間前まで苦悩の日々を送ることになる。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'13"732
2位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'14"202
3位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'14"370
4位
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'15"114
5位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'15"210
6位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1'16"091


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1゚46'54"786
2位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1゚46'55"527
3位
 マーティン・ブランドル  ベネトン・フォード  1゚47'48"942
4位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1Lap
5位
 テイリー・ブーツェン  リジェ・ルノー  1Lap
6位
 ステファノ・モデナ  ジョーダン・ヤマハ  1Lap
リタイア
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  18周、アクシデント
 
     
FL
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'16"078




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