1984年 モナコGP


1984年5月31日・6月2-3日
モナコ モンテカルロ市街地コース

予選:13位 決勝:2位


ここまで6戦を消化し、不運な予選落ちやトラブルによるリタイアなども経験したが、 早くも6位入賞を果たすなど、世間的な評価はまずまずといったところだろうか?

セナにとっては初めてのモナコ。 1回目の予選は開始早々バリアにクラッシュしサスペンションを壊す。 その後スペアカーに乗り換えてのベストタイムは15番手。

最終予選では全ドライバー中最多の25周を走り、コースを覚え、学習していく。 順位は13位に上昇。ちなみにチームメイトのジョニー・チェコットは18番手で、 セナは彼よりも0.8秒速い。

決勝レースは大雨の中で行われた。1周目で早くも3台がリタイア、セナは9位まで順位を上げる。 ただでさえグランプリ屈指の難コースのモナコであるが、さらに大雨といった最悪のコンディション…。 その後も多くのライバル達が次々と消えていく。

トップ争いはアラン・プロスト(マクラーレン)とナイジェル・マンセル(ロータス)。 プロストはPPから1位を守ってきたが、11周目にマンセルがプロストをかわしトップへ。 マンセルにとってはF1で初めての1位走行で、願ってもないチャンスがモナコで訪れた。

そんなトップ争いのはるか後方で、とんでもないペースで猛烈に追い上げてくるマシンがあった。 セナのトールマンである。ドライ路面ではマシンの差が如実に表れ、中盤グリッドに収まったセナだったが、 雨ではマシンの性能差が小さくなり、ドライバーの腕がより重要になってくる。 9周目には早くも入賞圏内の6位にまで浮上していた。

雨の中慎重に走るライバル達を尻目に、 セナは自らのオーバーテイクとライバル達の脱落などによって着実に順位を上げていく。 12周目には82年のチャンピオンであるケケ・ロズベルグ(ウイリアムズ)、14周目にはルネ・アルヌー(フェラーリ)といった、 一癖も二癖もあるベテラン強豪ドライバーを次々とかわし4位へ。16周目には1位走行のマンセルがバリアに激突しリタイア。 セナは早くも表彰台圏内の3位にまでポジションアップした。

そして19周目にはこの時すでに2度のチャンピオンを獲得し、後にこの84年のチャンピオンにも輝くことになる、 ニキ・ラウダ(マクラーレン)をかわして2位にまで浮上していた。

セナの勢いは止まらない。1位プロストに対して1~2秒、大きい時で5秒以上も速いラップタイムで追い上げていく。 20周目には34秒もあったプロストとセナの差が、31周終了時には7秒にまで縮まった。 セナはさらにプロストを追い詰める。

しかしあまりの大雨のためにプロストはコックピットからレース中止を訴えかける。 結局、この訴えはオフィシャルスターターのジャッキー・イクスに受け入れられる。 プロストはホームストレートの端で慎重にマシンを止め、その脇をセナが全速力で駆け抜けていった。

セナはこれで自分が勝ったと思ったが、レースは31周終了時の順位が最終結果になった。 記録的にはプロストから7秒遅れの2位… あと数周レースが続いていれば、セナがプロストを捕らえるのは誰の目からも明らかだった。

デビュー6戦目、初めての表彰台にもかかわらず、セナは時折笑顔を見せるものの、 決しておどけたり騒いだりはしていない。 関係者によると、むしろイライラしていたのだという。

トールマンという中堅チームにありながら、この頃からすでにセナには優勝以外は眼中になかったのかもしれない。 初めての2位表彰台、ファステスト・ラップ(FL)よりも、 あと一歩のところで強制的にレースを止められ、優勝を逃した悔しさの方が大きかったのだろう。

また、セナとともに注目を浴びていた新人がもう一人いた。ティレルのステファン・ベロフである。 彼は周回によってはセナ以上のラップタイムで追い上げ、プロストから21秒遅れの3位でレースを終えた。 実はセナのマシンのサスペンションはダメージを受けていたこともあり、 もしレースが続いていたら、優勝していたのはセナではなくベロフであっただろうと推測する関係者もいた。

しかしこの年のティレルは水タンクのレギュレーション違反のため、後に全戦のポイントが無効とされ、 ベロフ自身も翌年のCカーのレース中に事故死してしまう。 ベロフはドイツ出身。もしかしたらドイツ人初のF1ワールドチャンピオンはシューマッハーではなく ベロフだったのかもしれない。才能溢れるベロフの活躍は「伝説中の伝説」となってしまう…。

ともあれ、これで「アイルトン・セナ」という名前が世界中に広がった。 優勝にあと一歩というところでの2位というのも、結果的にはドラマティックでよかったのかもしれない。 ここからセナは、一人の「F1新人」から、「若き天才・未来のチャンピオン候補」として注目され、 セナはそんな周囲の期待以上の活躍をしていくのだった。 ここモナコから「セナ伝説」は始まっていった。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1'22"661
2位
 ナイジェル・マンセル  ロータス・ルノー  1'22"752
3位
 ルネ・アルヌー  フェラーリ  1'22"935
4位
 ミケーレ・アルボレート  フェラーリ  1'22"937
5位
 デレック・ワーウィック  ルノー  1'23"237
6位
 パトリック・タンベイ  ルノー  1'23"414
13位
 アイルトン・セナ  トールマン・ハート  1'25"009


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1゚01'07"740
2位
 アイルトン・セナ  トールマン・ハート  1゚01'15"186
3位
 ルネ・アルヌー  フェラーリ  1゚01'36"817
4位
 ケケ・ロズベルグ  ウイリアムズ・ホンダ  1゚01'42"986
5位
 エリオ・デ・アンジェリス  ロータス・ルノー  1゚01'52"179
6位
 ミケーレ・アルボレート  フェラーリ  1Lap
 
     
FL
 アイルトン・セナ  トールマン・ハート  1'54"334




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