1984年 ドイツGP


1984年8月3-5日
ドイツ ホッケンハイムリンク

予選:9位 決勝:リタイア


ホッケンハイムのパドックでは、トールマンと3年契約を結んでいるセナのロータス入りの噂が流れる。 セナもロータス側もコメントしようとはせず、噂の真相は当事者のみが知る…。

噂と緊迫した空気が流れる中、セナはドライビングに集中していく。 超高速のホッケンハイム。かつては60年代の英雄であるジム・クラークが事故死するなど、 ホッケンハイムの森には悪魔が住むといわれている。

金曜予選では改良されたハートエンジンの効果もあり5番手につける。 しかし土曜予選になるとエンジンの回転数が1000も落ちたこともあり、 タイムアップならず9位グリッドからのスタートになる。 とはいえ、これで5戦連続でシングルグリッドを獲得し、 トールマンのマシン性能を100%以上、かつ安定的に引き出している感がある。

決勝レースでは好スタートを切り、1周終了時で6位、 2周目にはタンべイ(ルノー)をかわし5位に浮上する。 セナのマシンはホッケンハイムの高速コースに合っていて、 何の問題もなく快調に周回を重ねているように見えた。 前を走るワーウィック(ルノー)にも迫り、表彰台も夢ではないくらい好調だったようだ。

しかし後ろを走っていたタンべイは、セナのマシンのリアに問題が発生したのに気がついた。 セナもリアの異変に気がついたが、 5周目の第1シケイン手前で突然リアカウルが外れてリアウイングが吹き飛んだ。 セナのマシンはスピンしながらコースアウトし、そのままガードレールにぶつかっていった。 幸いセナにはケガはなく、マシンを降りるとステアリングを投げつけ、悔しさいっぱいといった感じだった。 これも、このレースへの自信が大きかったからかもしれない。

大きな事故にならなかったのは、高速でガードレールにぶつかっていったものの、 その進入角度が直角的でなかったことだった。 1991年にもセナはここホッケンハイムの第1シケインにおいて、 時速300kmでリアタイヤが外れマシンが5mも宙を舞い激しいクラッシュをしてしまったが、 大きなケガには至らなかった。 ホッケンハイムの森に住む悪魔は、セナには本当の牙を向けなかった。

いや実際は、セナがギリギリのところで危険を回避したから大事故にならなかったのかもしれない。 セナは正面衝突だけは避けようと、スピンしつつもマシンをコントロールし、 ガードレールをブレーキ代わりにしてマシンを止めたそうだ。 スピン状態になりつつも、 最悪のケースだけは避けるためにマシンの動きを冷静に計算してコントロールするあたりは、 やはりセナにしかできない人間離れした神業だったのだろう。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1'47"012
2位
 エリオ・デ・アンジェリス  ロータス・ルノー  1'47"065
3位
 デレック・ワーウィック  ルノー  1'48"382
4位
 パトリック・タンベイ  ルノー  1'48"425
5位
 ネルソン・ピケ  ブラバム・BMW  1'48"584
6位
 ミケーレ・アルボレート  フェラーリ  1'48"847
9位
 アイルトン・セナ  トールマン・ハート  1'49"395


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1゚24'43"210
2位
 ニキ・ラウダ  マクラーレン・TAGポルシェ  1゚24'46"359
3位
 デレック・ワーウィック  ルノー  1゚25'19"633
4位
 ナイジェル・マンセル  ロータス・ルノー  1゚25'34"873
5位
 パトリック・タンベイ  ルノー  1゚25'55"159
6位
 ルネ・アルヌー  フェラーリ  1Lap
リタイア
 アイルトン・セナ  トールマン・ハート  4周、リヤカウル外れる
 
     
FL
 アラン・プロスト  マクラーレン・TAGポルシェ  1'53"538




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