ブラジルでの開幕戦から3週間のインターバルを置き、F1はヨーロッパに舞台を移す。
冬のテスト以降、各チームはこのサンマリノに照準を合わせマシンを熟成させることが多い。
本格的なシーズンの開幕である。 しかしアクティブサスペンションと言う全く新しい技術を導入したロータスは、 相変わらずマシンの動きに悩まされていた。 全てが理論どおりに機能すればものすごい性能を発揮すると予想できるが、 まだ開発段階であることは否めず、セナもハンドリングに手を焼いていた。 それでもセナはその見事なドライビングで必死にマシンをコントロールしていく。 金曜予選は3位、そして土曜予選では強力なウイリアムズ・ホンダのマンセルや プロスト(マクラーレン)を抑えてPPを決めた。 しかしこの結果に、セナ自身が最も驚いていたようだ。 マシンに少し乗っただけで大体の結果がわかってしまうセナの計算が、良い方向にズレてしまったようだ。 それでもセナは「クリアラップが取れただけ」と、淡々と、そして不満そうに語っていたと言う。 しかしセナの計算はシーズン全体を通しては決して間違っていなかった。 85年7回、86年8回もPPを獲得したセナは、87年はこのサンマリノGP1回のみであった。 それだけこの年のロータスは難しいマシンだったようだ。 ちなみにこの予選でピケ(ウイリアムズ)がタンブレロコーナーでクラッシュし、決勝レースを欠場せざるを得なくなった。 セナもピケのケガを心配していたが、幸いにも大事には至らなかった。 しかしこの時にコースを改修していれば…。 決勝レースでは無難なスタートを切りセナがオープニングラップを制するが、 2周目にはマンセル(ウイリアムズ)にかわされる。 さらにセナの背後にはプロスト(マクラーレン)が迫る。 セナはしばし必死に抵抗するが、プロスト(マクラーレン)に抜かれ3位に落ちた。 その後プロストはトラブルで脱落し、労せずしてセナは2位に復帰。 中盤のタイヤ交換の時期に2周ほどトップを走るが、 各車ピットアウトすると再びマンセルに続き2位に落ち着く。 セナはしばし2位を走行していく。 43周目にはアルボレート(フェラーリ)とパトレーゼ(ブラバム)にかわされ4位に後退するが、 50周目にパトレーゼ、その翌周にはアルボレートがペースを落とし、セナがパスし再び2位へ。 しかしさすがにマンセルまでは届かず、2位のままマシンをゴールまで導いた。 セナはホンダエンジンでの初入賞・初表彰台。 こうしてセナはまだ不完全なマシンながらも、限られた環境の中できっちりと結果を残した。 ちなみにチームメイトの中嶋も開幕戦に続きしっかりと走り切り、6位でF1初入賞を飾った。 F1ではセナの方が先輩であり中嶋にアドバイスをしていたが、 中嶋はホンダエンジンの特性に関して熟知しており、セナも中嶋からの情報に頼っていたと言う。 マシンは難しいものだったが、セナと中嶋は有益な情報を提供し合い、友好な関係を築いていった。 さらに誠実で仕事に対する献身的な姿勢でセナとホンダは共感し、 セナの日本人への信頼・愛着が深まっていった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | ロータス・ホンダ | 1'25"826 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1'25"946 |
3位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・TAGポルシェ | 1'26"135 |
4位 |
テオ・ファビ | ベネトン・フォード | 1'27"270 |
5位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'27"280 |
6位 |
ミケーレ・アルボレート | フェラーリ | 1'28"074 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1゚31'24"076 |
2位 |
アイルトン・セナ | ロータス・ホンダ | 1゚31'51"621 |
3位 |
ミケーレ・アルボレート | フェラーリ | 1゚32'03"220 |
4位 |
ステファン・ヨハンソン | マクラーレン・TAGポルシェ | 1゚32'24"664 |
5位 |
マーティン・ブランドル | ザクスピード | 2Laps |
6位 |
中嶋 悟 | ロータス・ホンダ | 2Laps |
FL |
テオ・ファビ | ベネトン・フォード | 1'29"246 |