近代化されたチーム環境、洗練されたシャシー、強力なホンダターボエンジン…。
チャンピオンになるべくのお膳立ては整った。あとは自らの実力で、チームメイトでこの時すでに2度のチャンピオン、
当時の通算最多勝を更新中のプロフェッサー、アラン・プロストを倒すだけ…。
セナの本格的な「チャンピオンへの道」が始まっていく。 予選は金曜、土曜共にトップタイム、PP獲得。2位のフェラーリ、マンセルに0.5秒の差をつける。 シーズン前のテストでは好タイムが出ていたものの、マクラーレン陣営、ホンダスタッフ、 共に「シーズンが始まるまではわからない」と慎重な姿勢だったが、この予選を終えてある程度の手応えをつかむ。 後の快進撃を思えば、慎重すぎる対応だったかもしれないが、物事とはこういうものなのかもしれない フォーメーションラップが終わり各車グリッドにつく。ここで最前列で大きく手を振るドライバー…セナである。 ギア・リンケージが壊れたのだ。レースは再スタート。マクラーレンチームはセナをスペアカーに乗せピットからスタートさせる。 1周目を21位で走り、その後も異次元の速さでごぼう抜きし、順位を上げていく。8周目に10位、13周目にポイント圏内の6位、 19周目に表彰台圏内の3位、20周目には首位プロストに次ぐ2位にまで上がる。 この段階でセナはタイヤ交換。しかしここでエンジンストールが発生。32秒もロスし、6位でコースに戻った。 セナの走りを持ってすれば、ピットでのロスを挽回し、この後もレース序盤のようにごぼう抜きし、 プロストをも捕らえられたかもしれないが、セナに非情な裁定が下る。31周、黒旗失格。 スタートでグリーンライトが灯ってからマシンを換えてはいけない、というレギュレーションに違反したのだ。 ちなみに31周も走らせておいて失格になったのは、その間、マクラーレンのロン・デニスがセナの失格について オフィシャルに抗議していたからだ。 これは明らかにチームのミスでセナに非はなかった。地元ブラジルで残念なレースになったが、 予選での速さや最後尾からの追撃など、これからの華々しい活躍を予感させるレースでもあった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'28"096 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ジャッド | 1'28"632 |
3位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'28"782 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'29"026 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ホンダ | 1'30"087 |
6位 |
ミケーレ・アルボレート | フェラーリ | 1'30"114 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1゚36'06"857 |
2位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1゚36'16"730 |
3位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ホンダ | 1゚37'15"438 |
4位 |
ディレック・ワーウッィク | アロウズ・メガトロン | 1゚37'20"205 |
5位 |
ミケーレ・アルボレート | フェラーリ | 1゚37'21"413 |
6位 |
中嶋 悟 | ロータス・ホンダ | 1Lap |
失格 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | スペアカー使用違反 |
FL |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'32"934 |