セナはチャンピオンをかけて鈴鹿に乗り込んできた。全ポイント数ではプロストがリードしていたが、
有効ポイントの関係でここ鈴鹿で勝てば自身初のワールドチャンピオンが決まる。
セナ絶対有利だが、プロストもしかし、前のイベリア半島シリーズを連勝し、意地を見せる。 金曜フリー走行はプロストがトップタイムで、彼も決して諦めていない。 しかし予選に入ると金曜・土曜共にセナが一番時計。プロストもセナから0.3秒差の2位。 セナとプロスト、このシーズン11回目のフロントロー対決になった。 決勝スタート。セナは数メートル進んだところでエンジンストールを起こしてしまう。 しかし神が味方したのか、鈴鹿のホームストレートは1コーナーに向かって緩やかな傾斜になっている。 セナのエンジンは何とか息を吹き返し、1コーナーを14位で進入する。リタイアを免れたとはいえ、これでセナの鈴鹿での優勝、 ワールドチャンピオン決定は不可能と思われた。 1周目を8位で通過したセナは、雨で濡れ始めた路面をものともせず、次々とライバル達をパス。 プロストとの差も一時13秒まで広がったが、レースのリズムをつかんでからはプロストとの差をジリジリ詰め、 20周目には2位にまで上がってくる。決戦のお膳立てはできた。 そして27周目の最終コーナーでプロストが周回遅れに引っかかり、シフトミスも犯したのか立ち上がりが鈍る。 その隙をセナは見逃さなかった。ホームストレートで並ぶと、28周目の1コーナーで滑りそうになりながらも 何とかマシンをコントロールしてプロストをオーバーテイク。プロストにはギアボックスの不調があったが、 そのことを考慮にいれても、十分に価値のあるセナの追撃であった。 セナはその後も雨で滑りやすい路面を危なげなく走行。 途中雨が強くなり、手を天に指してレース中止を訴えたこともあったが、最後まで集中力を切らさず走り切った。 ファイナルラップの最終コーナーを立ち上がったセナは何度も何度もガッツポーズを繰り返し、喜びを爆発させた。 新記録のシーズン8勝目、初のワールドチャンピオンを獲得した。 セナはF1界の頂点に立った。 新たな王者の誕生にプロストやロン・デニス、そして本田宗一郎氏らが祝福。 このころまだセナとプロストは兄弟のような良好な関係を築いていたが、 プロストはこの時すでに「来年は僕の番」とばかりに雪辱を誓っていたのかもしれない。 感動的な表彰式、そしてその後のインタビューでは、 セナはこのシーズンにすべてを出し切ってプロストを打ち破ったという満足感と、 いかに厳しい1年間だったかということを感じずにはいられなかった。 そしてセナは鈴鹿に神を見たという。 またセナとともにこのレースの主役であった中嶋 悟(ロータス)も、 日本GP開幕前日に母親が亡くなるという辛い状況の中で、 スタート直後のエンジンストールから追い上げて、入賞まであと一歩の7位まで順位を上げてファンを感動させた。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'41"853 |
2位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'42"177 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'43"353 |
4位 |
イワン・カペリ | マーチ・ジャッド | 1'43"605 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ホンダ | 1'43"693 |
6位 |
中嶋 悟 | ロータス・ホンダ | 1'43"693 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚33'26"173 |
2位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1゚33'39"536 |
3位 |
テイリー・ブーツェン | ベネトン・フォード | 1゚34'02"282 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1゚34'52"887 |
5位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1゚34'56"776 |
6位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ジャッド | 1゚35'03"788 |
FL |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'46"326 |