2週間前、セナは鈴鹿で涙の初王座を決め、新チャンピオンとしてオーストラリアに乗り込んできた。
実はレース1週間前にサッカーで右手首を痛めたということだが、レースに支障がなければいいが。 金曜日は右手首の痛みを感じながら、 ヘアピンでミスをしたということでプロスト(マクラーレン)に次いで2位。 土曜日はプロストと激しいトップタイムの応酬合戦になった。 残り4分になってセナがプロストのタイムを上回りトップタイム。 プロストも負けじと残り2分で再逆転。 これで勝負あったかにも見えたが、セナはスーパーラップでチェッカーフラッグが振り下ろされると同時に 再びプロストを上回った。 セナには右手首の痛みに加えてミッショントラブルでスペアカーで走らざるを得ないという悪条件だったが、 そんな不利な状況を自らの腕と精神力で克服した。 セナのPPは今シーズン13回目。 それまでのシーズンPP記録の9回を大きく上回った。 決勝レースではスタートでプロストに先行され、 3周目にはガス欠覚悟でマクラーレン勢に勝負を挑んできたベルガー(フェラーリ)にも抜かれ3位に落ちる。 気合の入ったベルガーは14周目にプロストをも捕らえトップに躍り出るが、 26周目にアルヌー(リジェ)を周回遅れにしようとしたときにクラッシュし、レースを離脱している。 ベルガー脱落後、セナはプロストと同じペース、同じ数秒の間隔で2位を走行する。 しかし次第にギアボックスが不調になってきた。 セナはやむを得ずペースを落とし、完走することを優先する。 プロストとの差は広がっていったが、大事に大事にマシンをコントロールしゴールまで導き、 88年を2位で締めくくった。 マクラーレンチームとしては16戦15勝、15PPという素晴らしい金字塔を打ち立てた。 無駄のないスマートなシャシー、強力なエンジン、当代最高の2人のドライバー… すべての要素が最高で、高い次元で見事に噛み合った結果だった。 セナに速いマシンを与えたらどうなるのか…ロータス時代、そんなことをささやかれていたが、 その答えが88年に現実化した。 まだまだ荒削りなところも残っていたかもしれないが、 それでもすでに王座を2度も取り、 最も脂が乗ってるとも思われる33歳のプロストをチームメイトにしてチャンピオンになったことは、 とても価値の高いことだったと思う。 そしてこのレースはターボ時代最後のレースでもあった。 翌年以降、エンジンとともにシャシーの空力性能が重要視されるようになる。 デザイナー不足のマクラーレンは次第にマシンポテンシャルを失っていくが、 逆にセナのドライビングは一層研ぎ澄まされていった。 この後、F1は完全にセナを中心に回り、空前のF1ブームを作り上げていくのだった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'17"748 |
2位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'17"880 |
3位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ジャッド | 1'19"427 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'19"517 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ホンダ | 1'19"535 |
6位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ジャッド | 1'19"925 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1゚53'14"676 |
2位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚53'51"463 |
3位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ホンダ | 1゚54'02"222 |
4位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ジャッド | 1゚54'34"764 |
5位 |
テイリー・ブーツェン | ベネトン・フォード | 1Lap |
6位 |
イワン・カペリ | マーチ・ジャッド | 1Lap |
FL |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'21"216 |