1989年10月20-22日
三重県 鈴鹿サーキット
シーズン中盤戦に不運なトラブルが多発し、ポルトガルGPではマンセル(フェラーリ)
に撃沈され貴重なポイントを失ってしまったセナ。
前戦スペインGP以降、勝ち続ける以外にチャンピオンへの道がなくなってしまった。
そのスペインGPは気迫で勝利をもぎ取り、前年涙の初チャンピオンを決めた鈴鹿へと必勝を期して乗り込んでいく。 セナは予選から全力疾走をする。 金曜、土曜共に最速。2位のプロストに1.7秒の差をつけてPP。 セナの予選アタックはこの年最高のスーパーラップと評されるほど、限界ギリギリの芸術だった。 セナは予選からプロストに最大のプレッシャーをかけていく。 その一方でプロストはこのセナの異常なまでの速さを受けて、決勝レースではセナとは違うアプローチで臨むことを決意する。 決勝がスタート。この頃はグリップの少ない汚れたイン側に1番グリッド、 レースラインのアウト側に2番グリッドがあり、PPよりも2位の方が有利だった。 さらにプロストはフライング気味にスタートし、1コーナーを奪っていく。 現在のレギュレーションではペナルティが課せられるほどの明らかなフライングだった。 そして予選の差が嘘だったかのように、プロストが素晴らしい走りで逃げていく。 プロストはウイングを寝かせてダウンフォースを減らせるセッティングを選んだ。 スタートで前に出て、そのまま逃げ切るという作戦が功を奏した。 ストレートで速いプロストは1周目からセナを1.4秒引き離し、14周終了時には5秒もの差をつける。 周回を重ねるにつれて、プロストとセナのラップタイム差がなくなり、 一定の間隔をあけて同じペースで異次元の走りを繰り広げる2人の天才。 21周終了時にプロストがタイヤ交換のためピットイン。 その間にセナが一瞬トップに立つが、2周後にセナもピットインし2人の差に大きな変化はなく中盤戦へ。 セナも終盤にチャンスが訪れると信じ、中盤から終盤にかけてペースを上げて徐々に差を詰め、 ブレーキを温存し、マシンをいたわりながらプロストを追走していく。 ストレートで速いプロストと、コーナーで速いセナのマッチレースが続いていく。 そして勝負のときはきた。プロストから1秒の差もなく背後につけていた47周目、セナは130Rから加速し、 シケインの入り口でプロストのインをついた。プロストはインを空けていたが、 セナが来たところでマシンを少し右に寄せ、2台のラインは交錯した。 プロストはその場でマシンを降りてリタイア。ここでリタイアするわけにはいかないセナは マーシャルの後押しでシケインを直進し、エスケープゾーンからコースに復帰。 プロストとの接触でフロントウイングを壊してしまい、翌周ピットイン。 その間にベネトンのナニーニに首位を奪われるが、51周目のシケインで何とかかわし、 1位でチェッカーを受けた。 しかし、セナはシケインを通過しなかったとして失格と裁定され、優勝はナニーニとなった。 マクラーレン側はこの裁定を抗議しチャンピオンシップは保留されたが、 事実上プロストの3度目の王座が決まった。 失格の裁定後、セナはコントロールタワーでしばし呆然とする。 その悲しげな瞳で何を見ていたのだろうか? シケインをわざわざ逆走してコースに戻ることはかえって危険で、 エスケープゾーンからのコース復帰は正しい判断と思われたが…。 セナはレースには勝ったが、その勝利の美酒を味わうことができなかった。 セナはプロストの他に、バレストルを中心とするFISAを完全に敵にまわすことになった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
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PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'38"041 |
2位 |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'39"771 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | フェラーリ | 1'40"187 |
4位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'40"406 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'40"936 |
6位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1'41"103 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1゚35'06"277 |
2位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚35'18"181 |
3位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1゚35'19"723 |
4位 |
ネルソン・ピケ | ロータス・ジャッド | 1゚36'50"502 |
5位 |
マーティン・ブランドル | ブラバム・ジャッド | 1Lap |
6位 |
デレック・ワーウィック | アロウズ・フォード | 1Lap |
失格 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 押しがけ、シケインショートカット |
FL |
アラン・プロスト | マクラーレン・ホンダ | 1'43"506 |