前年の日本、オーストラリアの接触事故でセナは危険なドライバーの烙印を押された。
一時はF1からの引退も考えたが、F1続行を決意。
しかしまだセナには完全にレースへの意欲を取り戻せずシーズンをスタートした。 この年からセナを取り巻く環境も変化した。 ライバルのプロストはフェラーリに移籍し、完全なる「宿敵」となった。 またプロストと入れ替わるようにベルガーがセナのチームメイトとしてマクラーレンに加入した。 一方マシンは前年型の改良版の MP4/5B。 バットマンのマークに似たマシン後部の「バットマンディフューザー」を装着し、 空力にも工夫を加えたが、その真価はいかに!? ホンダもV10エンジン2年目でさらなるパワーアップが期待される。 しかしセナはいきなり出鼻をくじかれる。 金曜日は午前中の電気系トラブルが響き5番手。土曜は砂漠のフェニックスで珍しい雨でタイムアップならず。 金曜のタイムがそのまま予選結果になり、セナは久々のの3列目からのスタート。 PPはベルガーだったが、2位にはマルティニ(ミナルディ)、 プロストが7位に沈むなど、前評判とは異なる混乱したグリッドになった。 レースがスタートすると、4位スタートのティレルの新鋭アレジがスルスルと抜け出し、1コーナーを奪っていく。 アレジは軽い車体とマッチしたピレリタイヤを生かし逃げる。セナも5位スタートながら、 ストリートコースにてこずるライバル達を尻目にじりじり追い上げ、3番手に上がる。 順位が落ち着くと、アレジ、ベルガー、セナが数秒の間隔で周回を重ねていた。 しかし2位走行中のベルガーは24周目に市街地コースのコンクリートウォールの餌食に。 単独クラッシュしその場でマシンを降りた。 セナは労せずして2位に浮上し、さらにガソリンが軽くなるにつれペースアップ。 少しずつ1位走行のアレジとの間隔を縮めていく。 そして34周目、セナはアレジのスリップストリームに入りオーバーテイクをした。 しかしアレジは次の直角ターンで再びセナを抜き返し、トップを死守した。 結局、翌周の同じコーナーでセナがアレジを抜き、 次のコーナーでも今度はしっかりインを閉めてセナがトップに。 その後は後続を引き離し、独走で開幕戦のトップチェッカーを受けた。 アレジも最後までしっかりと走り切り、初の2位表彰台に上った。 セナとアレジのバトルは、一歩間違えれば危険なようにも見えるかもしれない。 しかしアレジは後に「相手によっては、ぶつかるんじゃないか、 ミスするんじゃないかと不安を感じながら戦うこともしばしばあるが、 アイルトンとふたりで戦うときは、そこに問題は発生しないのだと、お互いわかっていたんだ」と語っていた。 セナもアレジも激しいバトルをしながらも非常にクリーンで、お互いを信じ合っていたのだ。 セナはアレジとのバトルでレーサーとしての情熱を完全に取り戻し、2度目の王座に向けて始動した。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'28"664 |
2位 |
ピエルルイジ・マルティ二 | ミナルディ・フォード | 1'28"731 |
3位 |
アンドレア・デ・チェザリス | ダラーラ・フォード | 1'29"019 |
4位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1'29"408 |
5位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'29"431 |
6位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1'29"862 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚52'32"829 |
2位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1゚52'41"514 |
3位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1゚53'26"909 |
4位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚53'41"187 |
5位 |
ステファノ・モデナ | ブラバム・ジャッド | 1゚53'42"332 |
6位 |
中嶋 悟 | ティレル・フォード | 1Lap |
FL |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'31"050 |