シリーズも中盤戦を迎え、F1サーカスは再び海を越えて北米大陸・カナダへ。
ジル・ビルニューブサーキットは一部公園内の公道を用い、埃っぽくバンピーである。
さらにこの時期の天候が不安定なため、
例年レースは荒れ、意外なチーム・ドライバーが上位にくることがある。 この年は最終予選の土曜日、そして決勝の日曜日に雨の予報がされていたので、 各チームは金曜日から積極的にアタックする。 最初はベネトン勢が好タイムをまとめてくる。 セッション中盤以降はセナとベルガーが交互にトップタイムを応酬し合う。 セナは予選用タイヤでの走りに不満を感じていたが、 最終的には決勝レース用タイヤで一番時計を叩き出す。 それでもセナは、「シケインでミスし、タイムロスしてしまった」と、 完璧への追求は忘れない。 天気予報どおり土曜日は雨。予選の時間帯は雨は止みコースは乾きつつあったが、 それでもコンディションは完全には回復せず、 このセッションでもトップだったセナも、前日よりも10秒落ちのタイム。 結局、金曜のタイム・順位がそのまま決勝グリッドになり、 セナは4戦連続のPPを獲得。 決勝レースも、ウエットからドライに変わりつつあるコンディションで行われた。 スタートでは、ベルガーがフライング気味に飛び出したが、セナはトップを守りレースをリードしていく。 最初の数周は水しぶきがあがるほどで各車ウエットタイヤでスタートしたが、 コースは乾きつつあり10周目前後にスリックタイヤに換えはじめる。 ベルガーは10周目、セナは12周目にピットイン。 セナのピットインの間にナニーニ(ベネトン)が数周トップに立ったが、 各車のスリックタイヤへの交換後は順位が安定していった。 そんな中コントロールタワーでは、 ベルガーのスタートをフライングとし、ペナルティを課すという裁定が下されていた。 ベルガーにはゴールタイムに1分が加算されることになった。 そのことを知ったマクラーレンチームとセナは、ベルガーを先に行かせることにした。 セナにしてみれば、ベルガーから1分以内でゴールできればよかった。 セナは見かけ上2位の位置で、乾き始めてコンディションが変わる難しい状況の中で 全く危なげのない走りを見せる。 前後に敵もなく余裕の走りに見えたセナだったが、 実は1速が壊れ、さらに車高を下げ過ぎたこともあり、 コントロールが難しく、必死にマシンを操りながらリードを保ったのだという。 結局、ベルガーから45秒遅れでゴールし優勝。 ベルガーは決勝タイムに1分が加算され、4位ということになった。 コンディションが変わっていく困難な状況だったが、 上位陣はしっかりと入賞を果たし、この年は大きな番狂わせはなかった。 セナは前戦モナコに続いての連勝。チャンピオンシップポイントを稼いでいく。 ライバルのプロストは、今回のストップ・アンド・ゴーのカナダではあまり目立たなかったが、 しかし、中高速コースが続く次戦以降の中盤戦にフェラーリの強さを発揮させ、 激しい「セナ・プロストバトル」が展開されることになる。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'20"399 |
2位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'20"465 |
3位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'20"826 |
4位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1'21"302 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1'25"568 |
6位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1'21"599 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚42'56"400 |
2位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚43'06"897 |
3位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1゚43'09"785 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚42'11"254 +1分のペナルティ |
5位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚43'12"220 |
6位 |
デレック・ワーウィック | ロータス・ランボルギーニ | 2Laps |
FL |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'22"077 |