モナコ、カナダと連勝し、よい流れでセナはメキシコに乗り込む。
しかしこのメキシコから数戦、逆に苦戦を強いられることになる。 金曜日からセナは決勝重視でセッティングを進める。 ホンダは新仕様のエンジンを投入するが、バンピーなコース路面と相まって、タイヤとマシンの挙動に苦しむ。 金曜4位、土曜2位で、2日間の予選全体では3位。 決勝レースではパトレーゼ(ウイリアムズ)が好スタートを切り1コーナーを奪い、 セナ、ベルガー(マクラーレン)らがこれに続いていく。 しかしセナは1周を終えて戻ってきたホームストレートでパトレーゼをパスし、トップに躍り出た。 その後セナは2位以下を引き離しながら周回を重ねていく。 チームメイトのベルガーもパトレーゼをかわし2位に浮上したが、 左フロントタイヤにブリスター(気泡)ができてピットインを余儀なくされていた。 マクラーレンのマシンはタイヤに厳しく負担がかかるようだ。 序盤から中盤にかけてセナは快調にトップを走行していたが、 残り25周くらいになったところでマシンの挙動に異変を感じた。 セナはタイヤの問題だと思っていたようだが、ピットからそのまま走行を続けるように指示されたという。 その頃セナのマシンには、右リアタイヤにスローパンクチャーの症状が発生していた。 セナはペースを落としながら走行を続けていく。 しかし後方からは赤い影が迫りつつあった。フェラーリに乗るプロストだ。 プロストはジリジリとセナに近づき、プレッシャーをかけ始める。 セナもそう簡単に抜かれまいと、絶妙なライン取りでプロストに隙を与えない。 そうこうしているうちにマンセルもこの2人の戦いに加わり、セナvsフェラーリ2台の構図へと変わっていく。 セナのタイヤは限界に近づき、フェラーリに追い立てられていく。 そしてプロストはじっくりと攻め立ててから62周目にセナをかわし、マンセルも次の周にセナをパスしていった。 セナは完走を目指して走るしかなかったが、追い討ちをかけるようにさらに悲運は続く。 64周目にタイヤがついに限界を超えてバーストしてしまった。 セナは周回数の関係で20位完走扱いとなった。 安全策を取って終盤にタイヤ交換をさせる選択肢もあったが、 マクラーレン陣営はなんとかそのまま走行を続けて3位入賞させようとした。 結果的にその作戦は失敗してしまった。 プロストは予選13位からの大逆転優勝。 プロストはこの予選結果にも関わらず、決勝レースには絶対の自信をもって臨んでいたという。 セナのタイヤトラブルまで予期していたかはわからないが、レースの組み立て方・セナへの追い込み方などは見事だった。 おそらくはプロストのF1後期のベストレースだっただろう。 セナ&マクラーレン陣営はこの後の中盤戦、コーナリング特性に優れ、 急速に進歩していくフェラーリに苦戦を強いられることになる。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'17"227 |
2位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'17"498 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'17"670 |
4位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'17"732 |
5位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1'17"883 |
6位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1'18"282 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚32'35"783 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1゚33'01"134 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚33'01"313 |
4位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1゚33'16"882 |
5位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1゚33'22"452 |
6位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚33'22"726 |
20位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 63周、バースト完走扱い |
FL |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'17"958 |