前戦フランスGPから2週連続でインターバルなく舞台はイギリス・シルバーストンへ。
短期間のため大幅な改良が見込めず、前戦に続いてフェラーリに対する苦戦が予想された。 金曜日は他のマシンに邪魔されたとは言うもののトップタイム。 しかし土曜日になると、タイヤに気泡ができ、 さらにダウンフォースを減らしたセッティングではマシンが不安定になるなど、 金曜の自らのタイムをも上回れずにセッション8位。 予選全体でも地元で気合の入るマンセル(フェラーリ)が2戦連続でPPを奪取、 セナは2番手からのスタートとなった。 決勝レースでは1列目のマンセルとセナが接近し緊迫したスタート。 そしてコプスコーナーに入るとセナが接戦を制し、マンセルの前に出た。 しかしマンセルもセナの背後にピタリとつける。 トップを走るセナはしかし、次第にマシンコントロールの悪化に悩まされていった。 一方のマンセルは果敢にセナを攻め続けていく。 9周目のシケインではマンセルは一瞬セナの前に出るが、 このときはマンセルがコーナーに深く入りすぎていたのでセナが冷静に抜き返す。 しかしマンセルの勢いは止まることなく、12周目には今度はセナを見事にオーバーテイクしトップに躍り出た。 セナはマンセルの勢いと安定したフェラーリのコーナースピードを押さえ込むことができなかった。 その頃セナはリアタイヤの磨耗にも悩まされていた。 そのことも影響したのか、14周目のコプスコーナーではタイヤを縁石に接触させスピン。 1回転して見事にコース復帰し、芸術点で言えば10点満点といったところだったが、 実際のレースでは順位を後退させタイヤを傷める結果となってしまった。 セナはすぐにピットに戻りタイヤを交換し、10位でコース復帰しここから追い上げを始める。 チャンピオンシップのためにも、最悪の中の最善…少しでも上位でゴールしておきたい。 しかしセナのマシンにはハンドリングの問題が発生していて、 思うようなペースで追い上げられない。 それでもセナはナーバスなマシンを懸命にプッシュして3位まで順位を上げ、貴重な4ポイントを得た。 優勝はチャンピオンシップのライバルであるプロスト(フェラーリ)、 2位にはブーツェン(ウイリアムズ)が入った。 また、6位には鈴木亜久里(ローラ)が初入賞し、後半戦に向けて調子を上げてきた。 セナは結果的にスピンを喫してしまい順位を下げたが、 それはミスというよりも、有効ポイント制ということもありスピン覚悟で限界を攻めていたように感じる。 本来ならフェラーリに到底かなわない状態であったにもかかわらず、 それでも懸命にわずかな可能性を見い出し、 ポイント狙いではなくあくまでも優勝を目指して限界ギリギリでドライビングしていたように思える。 その一方で順位を下げ、マシンバランスが悪化してからは少しでも順位を上げることに徹した。 この気持ちの切り替え、冷静と情熱の両立がセナには可能だった。 マシンも、そして自分自身をも完全にコントロールできていたのが セナというレーサーの最も偉大な特徴の一つだったと思う。 セナは苦しいフランス・イギリスの連戦を共に3位で乗り切り、 マクラーレンのマシンにより合ったドイツやベルギーなどを確実に制して、 チャンピオンに向かっていくのだった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'07"428 |
2位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'08"071 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'08"246 |
4位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1'08"291 |
5位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'08"336 |
6位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1'08"370 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚18'30"999 |
2位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1゚19'10"091 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚19'14"087 |
4位 |
エリック・ベルナール | ローラ・ランボルギーニ | 1゚19'46"301 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚19'55"002 |
6位 |
鈴木 亜久里 | ローラ・ランボルギーニ | 1Lap |
FL |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'11"291 |