セナはチャンピオンシップを優位に進めるために何としても勝ちたい。
プロストも逆転王座のためにフェラーリの地元モンツァで意地を見せたい。どちらにしても重要なレース。 金曜予選では、左フロントタイヤが限界で、 全開で立ち上がっていく最終コーナーのパラボリカの出口でスピードを緩めざるを得なかったとは言うものの、 暫定PPを獲得。 土曜日、セナのエンジンにトラブルが発生し、2度もエンジンを乗せ換えた。 予選開始時にはまだ作業が完了していなかったが、予選終了5分前にコースイン。 マシンはまだ完全な状態ではなく、1度きりのアタック… しかしセナは渾身の走り、そして全開でパラボリカを立ち上がり、自らのタイムをさらに更新した。 その時、スタンドで観戦していた多くのティフォシ(フェラーリの熱狂的ファン)は一瞬沈黙したが、 次の瞬間、セナのあまりにも素晴らしい走りに敵ながらも大歓声が上がったという。 敵も味方も熱狂・感動させるほどの全身全霊を込めた走り…それがセナ人気の根底にあるのかもしれない。 決勝前のウォームアップ走行時に3度のチャンピオン、ニキ・ラウダがセナを訪問。 「ボクはニキを尊敬している。…ボクはニキ・ラウダという人物に自分をちょっぴり重ね合わせているところがある。」とセナ。 決勝レースはワーウィックが最終コーナーで大クラッシュし再スタート。 2度目のスタートで、セナとベルガーのマクラーレン陣営がワン・ツー体制を築き上げる。 プロストはベルガーに抑えられ、しばし3位を走行。 プロストは20周目にようやくベルガーを捕らえ2位へ浮上し、セナ追撃にかかる。 その後はセナとプロストが数秒の間隔でファステストラップの応酬し合う。 しかしセナはプロストからのプレッシャーを跳ね除け、速く、かつ安定したペースでレースの主導権を握っていた。 結局セナは一度もトップを譲ることなく全周回首位でFLも記録して完全優勝。 敵地でチャンピオン獲得への貴重な優勝を飾った。 プロストも最後までセナを捕らえられなかったが、きっちり2位を確保した。 レース後の記者会見で、フランス人プレスの提案でプロストがセナに歩み寄る。 「もう過去のことは忘れよう、それを君も望むなら…」プロストはセナに握手を求め、 セナもそれに応えた。結果的に1ヶ月半後の鈴鹿で再び事件が起きてしまうのであるが…。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'22"533 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'22"935 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'22"936 |
4位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'23"141 |
5位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1'23"526 |
6位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1'23"984 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚17'57"878 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚18'03"932 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚18'05"282 |
4位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1゚18'54"097 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚19'23"152 |
6位 |
中嶋 悟 | ティレル・フォード | 1Lap |
FL |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'26"254 |