チャンピオンシップも4分の3を消化して残り4戦となり、
ポルトガル、スペインと続くイベリア半島シリーズへ。
エストリルはセナの初優勝の地でありゲンのいいサーキットであるが、
中高速のコーナーが続いているため、この年はコーナリング性能に優れるフェラーリが優位と見られた。 予選では金曜日にセナが暫定PPを決めるものの、 土曜日には厘差ながらマンセルとプロストのフェラーリ勢に先に行かれた。 マクラーレンにはハンドリングの問題があったようだ。 ちなみに決勝朝のウォームアップ走行ではエンジンにミスファイアが発生し、エンジンを交換している。 決勝レースではスタートでPPマンセルがイン側にマシンを滑らせ、 結果的に隣にいた2番手プロストの進路を塞いでしまった。 逆に3番手セナの前にはスペースができ一気に加速し1コーナーに入っていく。 セナに続いたのはチームメイトのベルガーで、早くもマクラーレンの1-2フォーメーションが完成した。 レースは中盤のタイヤ交換時までセナ、ベルガー、マンセルの順で進む。 セナは30周目にピットイン。 各車タイヤ交換を終えて順位が落ち着くとセナは再びのトップに立つが、 後方からは勢いを増したマンセルが迫っていた。 そして50周目のホームストレートでマンセルはセナのインにつく。 1年前のエストリルでは失格のマンセルとセナが接触するという事件が起きている。 そのことも脳裏をかすめたのか、セナはマンセルとの無用なバトルは避けた。 「マンセルが僕のスリップストリームに入っていたから、コーナーを争うのは危険すぎた。 チャンピオンシップのことが頭にあったからね。 彼がどの位置にいるかよく見えなかったし…。それで、マンセルを前に行かせてやったよ」 (「生涯 アイルトン・セナ」より) レースはカフィ(アロウズ)と鈴木亜久里(ローラ)の事故で、 トップが62周完了直後に赤旗が出て終了。71周レースだったが61周終了時の順位が最終リザルトになった。 セナはマンセルには抜かれたが、 チャンピオンシップのライバルであるプロストは1.4秒差で押さえ2位でレースを終えた。 このレースでは半ば妥協した形でマンセルに道を譲った。 しかしセナの性格上、本当は誰にも抜かれず限界ギリギリまで戦いたかっただろうし、 マンセルを簡単に先に行かせたのは大変な「勇気」が必要だったと思う。 シーズンも終盤を向かえ、セナは攻めるべき場面と慎重に行くべき場面を冷静に判断し、 自分自身をコントロールしていたのだと思う。 そしてその結果、ポイント的にも精神的にもチャンピオンにまた一歩近づいていった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'13"557 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'13"595 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'13"601 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'14"292 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'14"723 |
6位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1'14"728 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1゚22'11"014 |
2位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚22'13"822 |
3位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚22'15"203 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚22'16"910 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚23'08"432 |
6位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1゚23'09"263 |
FL |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'18"306 |