長く続いたヨーロッパラウンドもここスペインで終わり、チャンピオンシップも佳境に入る。 しかしそんなチャンピオンシップ以上の緊張がサーキットに広がる。 金曜予選、マーティン・ドネリー(ロータス)が大クラッシュ。ドライバーを守るはずのモノコックが真っ二つにちぎれ、 ドネリーはコックピットから投げ出されコース上にうずくまっていた。 幸いにもドネリーは奇跡的に一命を取り留めた。 しかしその悲惨な事故を目の当たりにしたドライバー達、特にセナは大きな衝撃を受けた。 セナは事故原因を追求すると共に、人間がいかに脆い存在であるかということを実感し、涙した。 しかしそんな中でセナは自らの感情を完璧にコントロールしてセッション再開後にスーパーラップを刻みトップタイム。 土曜日にはさらにタイムを更新して、通算50回目のPPを獲得した。 決勝レースはスターティング・グリットのまま、 セナ、プロスト(フェラーリ)、マンセル(フェラーリ)の順で進む。 予選ではプロストに0.4秒の差をつけたセナとマクラーレンだったが、 決勝レースではフェラーリは非常に速く、セナはプロストを突き放せない。 20周目頃から各車タイヤ交換のためのピットインが始まる。 コース上ではセナを抜けないと悟ったプロストはここで早めに動いた。 プロストは25周目にピットインし、6.17秒のタイヤ交換でコース復帰。 一方セナは27周目にピットインし、ピットクルーは5.71秒の早業でコースに送り込んだ。 しかしセナがコースに戻った時、プロストがわずかにセナの前をかすめるように通過していった。 プロストはピットアウト後の数ラップを全速力で走っていたのだ。 「さすがプロスト教授!」…そう思わせるようなシーンであった。 続けざまにマンセルもセナをかわそうとするが、これにはセナは絶妙なライン取りで対抗し2位は死守する。 今度はセナが逆にプロストを追撃しようとするが、決勝セッティングのフェラーリは速い。 さらにセナのマシンにトラブルが発生。ラジエターが破損し水漏れ、 それが原因でオーバーヒートしマシンの警告灯が点灯した。 54周目に入ったところで、セナはゆっくりとコース脇にマシンを止めた。 優勝はプロスト、2位はマンセル。 フェラーリは終盤に来て確実に調子を上げ、打倒・マクラーレン、チャンピオン奪取に燃える。 マクラーレンはホンダエンジンこそパワフルであるが、高速コーナーでは完全にフェラーリに遅れを取っていた。 セナVSプロスト、マクラーレンVSフェラーリ… チャンピオンシップ決定は、鈴鹿に持ち越された。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'18"387 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'18"824 |
3位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1'19"106 |
4位 |
ジャン・アレジ | ティレル・フォード | 1'19"604 |
5位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'19"618 |
6位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"647 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚48'01"461 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | フェラーリ | 1゚48'23"525 |
3位 |
アレッサンドロ・ナニーニ | ベネトン・フォード | 1゚48'36"335 |
4位 |
テイリー・ブーツェン | ウイリアムズ・ルノー | 1゚48'44"757 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚48'58"991 |
6位 |
鈴木 亜久里 | ローラ・ランボルギーニ | 1゚49'05"189 |
リタイア |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 53周、ラジエター、エンジン |
FL |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'24"513 |