前人未到の開幕4連勝を達成し、周囲からは「1988年の再来か?」ともささやかれつつあったが、
その一方で当事者のセナは連勝中にもかかわらずチームに訴え続けた。
「マクラーレンは最強じゃない。ウイリアムズは必ず反撃にくる。我々は改良が必要だ…」と。
そしてセナの指摘が正しかったことが、このカナダGP以降で証明されることになる。 金曜はウエット状態での予選で、マンセル(ウイリアムズ)、アレジ(フェラーリ)に続き3位。 土曜になるとコンディションは快方に向かい、各車金曜のタイムを15秒前後まで更新してきた。 セナはいつものようにマシンのポテンシャルを最大限に引き出してアタックするが、 今回はセナの前にはウイリアムズの2台がいた。 セナは前年スペインGP以来7戦連続で守りつづけた指定席であるPPを、 213戦目の鉄人・パトレーゼ(ウイリアムズ)に奪われ、3番手からのスタート。 決勝レースは、スタート直後にマンセルがパトレーゼをかわしてトップに立つ。 セナはウイリアムズ勢についていくことができず、プロスト(フェラーリ)を従えて3位を走行。 ちなみにモナコGP後、何かとプロストと衝突していたフェラーリのフィオリオ監督が解任された。 これでプロストがチームの主導権を完全に握るのか? しかしシーズン終盤にはプロストもフェラーリを解雇させられることになる。 マンセル、パトレーゼのウイリアムズ勢は快調に周回を進めていく。 その一方で他のチームはトラブルに見舞われる。 4周目、早くもセナのチームメイトのベルガーが点火プラグのトラブルのために戦列を去る。 さらに3位走行のセナも26周目にスローダウン。電気系・オルタネーターのトラブルでマシンをコース脇に止めた。 その2周後にはプロストもスローダウン、リタイア。 ジル・ビルヌーブサーキットは所々に小さなバンプがあり、各車それが原因でトラブルが多発したと考えられる。 レースはマンセルの独走でファイナルラップを向かえた。 しかし残り半周を切ったヘアピンでマンセルもスローダウン。 こちらも電気系からのセミオートマのトラブルということになってはいるが、 その一方で、マンセルが観客に手を振ろうとして誤ってコックピット内のスイッチを切ってしまった、 という説も浮上している。いづれにしろ、これが世に言うマンセルの「バンザイ・ストップ」である。 完走10台のサバイバルレースを制したのはピケ(ベネトン)。結果的に彼にとっては最後の勝利になってしまった。 いささかタナボタ的ではあったが、これも「レース」である。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"837 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'20"225 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'20"318 |
4位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'20"656 |
5位 |
ロベルト・モレノ | ベネトン・フォード | 1'20"686 |
6位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'20"916 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚38'51"490 |
2位 |
ステファノ・モデナ | ティレル・ホンダ | 1゚39'23"322 |
3位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚39'33"707 |
4位 |
アンドレア・デ・チェザリス | ジョーダン・フォード | 1゚40'11"700 |
5位 |
ベルトラン・ガショー | ジョーダン・フォード | 1゚40'13"841 |
6位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1Lap、最終周にストップ |
リタイア |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 25周、電気系統 |
FL |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'22"385 |