1991年 メキシコGP


1991年6月14-16日
メキシコ アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス

予選:3位 決勝:3位


前戦カナダGPに続き、F1サーカスは2戦続けて北米シリーズ。 今度の舞台は北米大陸南端のメキシコ、バンピーな路面のエルマノス・ロドリゲス サーキット。

セナはカナダGPからメキシコGPまでのインターバルにブラジルに戻りリフレッシュをするが、 6月9日にジェットスキーで後頭部を5針縫うケガをした。 セナは記者会見で「日曜日に、傷口の針の数だけポイントを獲れれば文句はないよ」とジョークを飛ばす。 幸い外傷だけで済んだがセナの後頭部は痛々しく、 レオスのヘルメットは傷の部分に直接当たらないように内装をくりぬくなどの処置をした。

セナの不運はまだ続く。 金曜予選、2度目のアタック中に最終コーナーでバンプに乗りバランスを崩しながらコースアウト。 マシンは後ろ向きにタイヤバリアに激突し、さらにその衝撃でひっくり返ってしまった。 幸いセナにはケガはなかったが、このクラッシュにはマクラーレン・ホンダの現在の状況を象徴しているかのようだった。

コースアウトとクラッシュは決してセナの単純なミスではなく、リスク覚悟で限界を超えて攻めていた結果だった。 セナが開幕から指摘してきたウイリアムズ・ルノーの速さが、誰の目にも明確になってきたのだ。 マクラーレン・ホンダ陣営は追い詰められていた。 セナはフジテレビのカメラに向かってホンダに「もっといいエンジンを」とプレッシャーを与える。 衝撃的なインタビューだったが、しかしそれは、セナとホンダの絆が根底にあってのことだったと思う。

予選は金曜3位、土曜は途中から雨が落ちてきて全体的にタイムアップならず。 セナはパトレーゼ、マンセルのウイリアムズ勢に続く3位。 パトレーゼからは0.5秒以上も離され、カナダに続きフロントローを独占された。 ウイリアムズはセミオートマなどの初期トラブルが解消し、いよいよ本領発揮といった雰囲気だ。

決勝レースでは2度スタートがやり直しになり、3度目でようやくレースが始まる。 上位陣は大きな混乱なく無難なスタート。 しかしコントロールラインから1コーナーに至るまでの長いストレートで順位が多少入れ替わる。 マンセルが1コーナーを奪い、アレジ(フェラーリ)がセナのインをつき2位へジャンプアップ。 セナは予選順位と変わらず3位、PPパトレーゼは1コーナーをアウトラインから入らざるを得ず4位に後退した。

1コーナーでアレジにインをつかれたセナだったが、早くも2周目の1コーナーでアレジを捕らえる。 広いコース幅を利用して、アレジを厳しく牽制しながら2位を奪っていった。 しかし後方からはスタートで失敗したパトレーゼがアレジをかわし、さらにセナに迫っていた。

セナは必死にパトレーゼを抑えていくが、11周目のホームストレート~1コーナーでついにパトレーゼにかわされてしまう。 セナはレスダウンフォース(ストレート重視)のセッティングだったが、そのストレートで捕らえられてしまった。 もはや、ウイリアムズとマクラーレンのマシンの差は歴然となっていた。 セナはさらに先程かわしていったアレジにも14周目に再び捕らえられ、4位に後退。 しかしこちらは、翌周にアレジが大きくペースダウンし、労せずして3位に復帰。

トップ争いはパトレーゼがチームメイトのマンセルをも豪快にかわして1位に浮上していた。 セナは3位から再びペースを上げて2位マンセルに迫っていく。 マンセルはその頃、ルノーエンジンのパワーダウンの症状に悩まされていた。

そして33周目の1コーナー、セナはマンセルに勝負を仕掛ける。 セナはマンセルに並びかけたが、マンセルも意地で2位を守っていく。 その後もセナはマンセルに仕掛けていくとも予想できたが、 ルノーエンジンは空気のミクスチャー(混合気)を濃くして走ればパワーダウンは防げるとわかり、マンセルは再びペースアップ。

結局これ以降はセナはウイリアムズ勢に引き離される一方で、 トップから1分近くの大差をつけられての3位でレースを終えた。 優勝はパトレーゼ、2位マンセルと、ウイリアムズのワン・ツー・フィニッシュ。 パトレーゼは予選から好走し、決勝でもスタートで4位に落ちるもののそこから追い上げ、 最後はマンセルをも豪快にオーバーテイクするなど、彼のキャリアの中でもベストレースの一つだったと思う。

開幕からのセナに味方した流れは完全にストップし、逆にウイリアムズ優位が明確になった。 セナは自らの腕で必死にウイリアムズ勢に対抗しようとするが、 マクラーレンのシャシー、ホンダエンジン、シェルガソリンに改良が施されるまで、 しばし我慢のレースを続けざるを得なかった。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'16"699
2位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'16"978
3位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'17"264
4位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1'18"129
5位
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'18"156
6位
 ネルソン・ピケ  ベネトン・フォード  1'18"168


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1゚29'52"205
2位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1゚29'53"541
3位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1゚30'49"561
4位
 アンドレア・デ・チェザリス  ジョーダン・フォード  1Lap
5位
 ロベルト・モレノ  ベネトン・フォード  1Lap
6位
 エリック・ベルナール  ラルース・フォード  1Lap
 
     
FL
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'16"788




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