前戦メキシコGPではウイリアムズが圧倒的なパフォーマンスを見せ付けた。
開幕以来のマクラーレンに向いていた流れは完全に止まり、逆に追いかける立場になってしまった。
さらにここフランスでは、フェラーリがニューマシン 643を投入。
マクラーレン包囲網は厳しくなるばかりだ。 この年からフランスGPの舞台はポール・リカールからマニ・クールへと移動した。 そんな新コースで早くも力を発揮したのはセナだった。 「他のドライバーには見えないベストラインがセナだけには見えるに違いない」とは今宮純氏。 金曜予選は、シェルの持ち込んだ新ガソリンの効果もあってセナが暫定PP。 しかしセナは土曜日には不運に見舞われる。午前中はシリンダーのトラブルでほとんど走れず。 午後の予選では一時トップに立つものの、ニューマシン投入のフェラーリのプロスト、 そしてこのところマンセル以上に元気なパトレーゼ(ウイリアムズ)が次々とトップタイムを更新。 セナは最後にもう一度アタックに出るが、 その直前にグルイヤール(フォンドメタル)がコース上にオイルを撒き散らしながら走行。 これがセナに影響し、最終コーナーでスピンしながらコントロール・ラインを通過。 芸術点は満点だったが、自身のタイムをわずか0.002秒更新したにとどまり、前戦に続き3番手からのスタート。 決勝レースでは、スタートでPPのパトレーゼが大きく出遅れたが、 それに代わってマンセル(ウイリアムズ)がセナの前に割って入り、 プロストとトップ争い。セナはこの時点でウイリアムズやフェラーリにはついていけないことを実感する。 セナはその後淡々と3位を走行し、プロスト、マンセルからは大きく水を開けられる。 それどころか燃費の問題も生じ、ペースダウンを余儀なくされ、 後方からアレジ(フェラーリ)に攻め立てられる。 マクラーレンのもう一人のベルガーは、7周目に早くもエンジントラブルでリタイア。 ベルガーにばかりトラブルが生じているが、これは彼にオーバーレブが多く、 さらにホンダV12はオーバーレブに弱いためのようだ。 セナもベルガーもホンダに苦言を吐く。しかしこれもホンダを信頼してのことだったように思える。 セナはアレジとの差をうまくコントロールしながら周回を重ねていく。 結局、1位マンセルから34秒差、アレジを1秒差に従えて3位でレースを終えた。 優勝はプロストを見事なオーバーテイクで逆転したマンセル。 これで勢いづいたマンセルはこの後破竹の連勝。 一度調子に乗ったマンセルは誰にも止められない。 ポイント的には依然としてセナが大量リードしているが、情勢はウイリアムズ圧倒的有利に見えた。 セナにとっては苦しい中盤戦が続く。しかしマシンの根本的改良が行われるまでは、 我慢の走りで確実にポイントを稼ぎ、プロストのようにシリーズ全体のことを考えて、 苦しい時をしのぐ術を身につけていた。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'14"559 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'14"789 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'14"857 |
4位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'14"895 |
5位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'15"376 |
6位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'15"877 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1゚38'00"056 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚38'05"059 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚38'34"990 |
4位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1゚38'35"976 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1Lap |
6位 |
アンドレア・デ・チェザリス | ジョーダン・フォード | 1Lap |
FL |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"168 |