前戦フランスGPから2週連続でF1はシルバーストンへと舞台を移す。
シルバーストンはかつての、ストレートをコーナーでつないだような高速コースが大きく改修され、
中速~高速コーナーが所々に配置された。 またカナダ以降、ウイリアムズ・ルノーの優位性がより明確となり、 逆にマクラーレン・ホンダは開幕当初にセナが指摘していたように、 いつの間にか追う立場になっていた。 空力特性に優れ、抜群の安定感を誇るウイリアムズが、 改修になったシルバーストンでさらなる強さを発揮することが予想された。 それでもマクラーレン・ホンダ陣営は手をこまねいてウイリアムズの強さをただ見ているだけではない。 ホンダは新しいスペック3エンジンを投入。 金曜予選は3位に終わったが、土曜になると現状のマクラーレンのマシンの性能を100%以上引き出し、 トップタイムをマーク。 このままセナが久々の指定席・PPを奪うかと思われたが、 マンセル(ウイリアムズ)がセナのお株を奪うような予選終了間際のアタックで逆転。 セナにとっては残念な結果に終わったが、 世界的F1誌「オートスポーツ」はこう記していたようだ。 「アイルトンのラップは見事としか言いようがない。 明らかに、ウイリアムズ・ルノーはマクラーレン・ホンダよりも約1秒速いが、 セナはそんな事実も忘れさせてしまう。限界ギリギリの正確ですばらしい走り…。」 (「生涯 アイルトン・セナ」より) 決勝レースでも、セナは好スタートを切りトップに躍り出るが、 ウイリアムズとのマシン性能差は如何ともしがたく、 ハンガーストレートでマンセルにあっけなくかわされてしまう。 セナはタイヤ無交換で走りきろうとしていた。 そのためにあえてマンセルを相手にしなかったのかもしれない。 地元イギリスの大声援を受けて爆走するマンセルに対し、 セナは必要以上には抵抗せず、ただ黙々と2位のポジションを走っていく。 レースは中盤を過ぎても、1位マンセル、2位セナの順位は変わらず。 終盤になってセナの左フロントタイヤにブリスター(気泡)が発生し少し揺れが出たとのことだが、 大きな問題ではなかったようだ。 セナは順調に周回を重ね、ファイナルラップを迎えた。 「2位や3位のためにレースをしているのではない」とセナ自信が語り、 はじめから優勝を諦めているわけではないが、 大きな改良が見込めずウイリアムズ・マンセルとも大差がついている今、 確実にポイントを稼ぐこともチャンピオンシップを戦う上で重要になってくる。 このまま2位でゴールし貴重な6ポイントを獲得するかと思われたセナだったが、 しかし最後の最後で思わぬアクシデントが発生する。 燃料が不足し、ユルユルとマシンが止まってしまったのだ。 ガソリン残量表示はゴールまで走れる計算だったにもかかわらず…。 ストップしてしまったセナは結局、4位完走扱いとなった。 コース脇にたたずむセナに対し、独走で優勝しウイニングランに入っていたマンセルが近づく。 マンセルはセナを呼び、自らのマシンのサイドポンツーンにセナを乗せて再びウイニングランへ。 マンセルには決して嫌味な意味はなかったと思うが、 結果的に「波に乗るウイリアムズ、失速したマクラーレン」と言う、 この年の中盤戦を象徴するようなシーンとなった。 マクラーレン、ホンダ、シェル…チームは一丸となって必死に改良に取り組んでいるが、 それが成果として現れるにはもうしばらく時間が必要であった。 セナの苦しい夏場は続く…。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'20"939 |
2位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'21"618 |
3位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'22"109 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'22"476 |
5位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'22"478 |
6位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'22"881 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1゚27'35"479 |
2位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚28'17"772 |
3位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1゚28'35"629 |
4位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1Lap、ガス欠 |
5位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1Lap |
6位 |
ベルトラン・ガショー | ジョーダン・フォード | 1Lap |
FL |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'26"379 |