セナはドイツGPの一週間前のホッケンハイムテストで、第1シケインにおいて時速300kmでリアタイヤが外れ、
マシンは5mも宙を舞い、激しいクラッシュをしてしまう。
奇跡的に首と肩を少々痛めただけでドイツGP参戦には問題なかったが、非常に危険なクラッシュであったようだ。 7月25日木曜日、日本人初フルタイムF1ドライバーの中嶋悟が、1991年限りの現役引退を発表した。 中嶋は1987年のセナのチームメイト。セナはF1ルーキーの中嶋にアドバイスをし、 中嶋もセナにホンダエンジンについて情報を提供したという。 「彼は、F1が日本で認知され普及するのにすごく貢献してくれた。 …(中嶋の引退について)正しい選択をしたことを祈るよ」とはセナ。 マクラーレンはタバコ広告が禁止のGPでは「Marlboro」ロゴを隠し、 ウイングを無地に、マシン側部にはバーコードの模様を施していた。 しかしここドイツGPでは、ウイングにもマシン側部にも「McLaren」の文字が張られた。 これは、この年のマシン「MP4/6」のモデル化の公認を得たタミヤ模型が、無地のウイングやバーコードでは あまりに見栄えがしないため、マクラーレンに働きかけたためとされる。 予選では金曜4位、土曜は挽回したがそれでもマンセル(ウイリアムズ)には0.2秒とどかず2位が精一杯。 超高速ホッケンハイムで、ホンダエンジンをもってしても、ウイリアムズ+ルノーの総合力には苦しい戦いを強いられる。 決勝がスタートするとマンセルが無難に首位を守り、ベルガー(マクラーレン)、セナ、プロスト(フェラーリ)、 アレジ(フェラーリ)が続いた。パトレーゼ(ウイリアムズ)はスタートで出遅れたがすぐにアレジをパスし、 序盤戦はセナ、プロストと共に3位争い。 2位ベルガーは14周終了時にピットインしたが、タイヤのナットが噛み合わず 大きく後退する。2位に上がったセナと3位プロストは17周終了時に同時ピットイン。 同じようなロスタイムで、同じような位置関係でコースに戻った。 マンセル、パトレーゼもその後すぐにピットイン。アレジだけは硬めのBタイヤでタイヤ無交換作戦を敢行、しばし首位を走る。 マンセルはアレジの後ろ、パトレーゼはセナ、プロストの後ろにでレース復帰。 しかしウイリアムズのマシン・アドバンテージを生かして、マンセルは再び首位へ、 パトレーゼも激しいセナ・プロストバトルの間を縫うようにして3位に浮上した。 中盤~終盤にかけて、セナ・プロストバトルは周を追うごとに激化する。 プロストはセナに並びかけるが、セナも隙を見せずにレーシング・ラインを守る。 4位争いではあるが、非常に高度なバトルである。 プロストは残り8周になった38周目に勝負に出る。第1シケインでアウトから並びかけるが セナはインのラインを譲らない。プロストはエスケープゾーンを直進してしまうが、 エスケープゾーンとコースとの境に小さなコーン状の障害物があり、コース復帰ならずここでリタイアした。 プロストは公然とセナのドライビングを批判した。映像で見る限りでは、 プロストの突っ込みに無理があったような気がするが…。 セナは前後にライバルもなく、とりあえず4位は安泰かと思われたが、 前戦イギリスに続きファイナルラップでまさかのガス欠でストップ。完走7位扱いになった。 当初は、改良が進むホンダ・エンジンとシェルのガソリンの間で不具合がおき、 ガソリン残量が正しく表示されなかったためだと言われていたが、 実際にはマクラーレン側の作業ミスが原因だったことが後になってわかった。 ウイリアムズ勢は1位と3位でゴールし、これでコンストラクターズ・ポイントでマクラーレンを逆転した。 さらにプロストとの間で新たなしこりを残すなど、マクラーレン&セナに黄色信号が灯ってしまった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'37"087 |
2位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'37"274 |
3位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'37"393 |
4位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'37"435 |
5位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'39"034 |
6位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'39"042 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1゚19'29"661 |
2位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚19'43"440 |
3位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1゚19'47"279 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚20'02"312 |
5位 |
アンドレア・デ・チェザリス | ジョーダン・フォード | 1゚20'47"198 |
6位 |
ベルトラン・ガショー | ジョーダン・フォード | 1゚21'10"266 |
7位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1Lap、ガス欠完走扱い |
FL |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'43"569 |