前戦ハンガリーでウイリアムズの流れを止めることができたセナ。
得意のここベルギーでも優勝し、チャンピオンに向けて一気に加速していきたいところだ。 ホンダは、自動的にエンジンの上部にあるトランペット部分の長さを変え エンジンパワーを引き出すという「可変吸気トランペット」を導入した。 本来なら完成まで1年近くかかる技術を1ヵ月半で仕上げてきたという。 マクラーレンもホンダもシェルも気合十分で次々に新兵器を投入し、 「打倒・ウイリアムズ」で必勝を期していた。 それでも空力性能に優れるライバルのウイリアムズ勢は強力で、 金曜午前のフリー走行ではセナを抑えて上位2位を占める。 しかしセナはマクラーレンのマシンを丹念にセットアップし、 午後の予選ではベルガー(マクラーレン)とともに1-2。 土曜予選ではさらにタイムを縮め、プロスト(フェラーリ)、 マンセル(ウイリアムズ)に1秒以上の大差をつけて2戦連続でPP。 もう一人の優勝候補であるパトレーゼ(ウイリアムズ)は車検で引っかかり、 2日目のタイムが無効になり17番手からのスタートとなった。 なお、このレースでジョーダンからミハエル・シューマッハーがデビューしたが、 いきなりチームメイトのチェザリスよりも速く予選7番手を獲得した。 セナもシューマッハーも、時代を作っていくような偉大なドライバーは、 はじめから与えられた環境の中でベストな結果を成し遂げ、 確実にチャンスをつかんでいくのだった。 決勝レース、セナはスペアカーでレースに臨んだ。。 フロントローには久々にセナとプロストが並んだが、何の問題もなく1コーナーを過ぎていった。 注目のシューマッハーは半周もしないうちにクラッチを壊し早々とレースを終えているが、 それでも各チーム関係者に与える影響は十分だった。 次戦イタリアGPでは、シューマッハーはベネトンから参戦することになる。 トップ争いはセナに続きマンセルが2位に上がり、 プロストは早くも3周目にエンジンが壊れリタイア。 序盤戦はセナとマンセルのマッチレースになった。 レースが動いたのは16周目、セナがタイヤ交換のためピットインした。 しかしこのときにピット作業に手間取り、必要以上にタイムロスしてしまった。 セナは5位でコース復帰した。 ピケ(ベネトン)とベルガーがピットインするとセナは自動的に3位に上がった。 その時セナの前方にはマンセルとアレジ(フェラーリ)がいた。 マンセルは順調にトップを快走。しかしマンセルは23周目に電気系統のトラブルでリタイア。 チャンピオンシップのライバルが消え、セナにとっては大きかった。 マンセルに代わり1位を走るアレジはタイヤ無交換作戦を敢行しようとしていた。 2位のセナにもギアボックスにトラブルが発生し始めていて一旦ペースを落とすが、 次第にペースを取り戻しアレジに迫りつつあった。 しかしセナは労せずして1位に復帰する。 31周目にアレジがエンジントラブルで脱落したのだ。 残り13周、このままセナが簡単に逃げ切るかとも思われていたが、 後方からはチェザリスとパトレーゼが迫っていた。 しかしチェザリスはエンジンが壊れストップ、 パトレーゼもギアボックストラブルから後退していった。 各車トラブルで次々と消えていく中、セナは最後まで生き残った。 しかしセナにもギアボックスのトラブルが発生していて、決して楽なレースではなかった。 3速と6速を探し当てながらの走行だったと言う。 並みのドライバーならとっくに諦めていた、もしくは完全に壊してしまったかもしれない。 セナはマシンを優しく労わりながらゴールまで導いた。 これでセナは、ドライバーサーキットと呼ばれる難しいスパのコースで4年連続5回目の優勝を飾った。 ポールから独走の典型的なセナの勝ち方ではなかったが、 トラブルと戦いながら難しいレースを制し、速いだけでなく頭脳的な面も改めて証明した。 そしてこの勝利がチャンピオンに向けて貴重なポイントになっていくのだった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'47"811 |
2位 |
アラン・プロスト | フェラーリ | 1'48"821 |
3位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'48"828 |
4位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'49"485 |
5位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'49"974 |
6位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1'50"540 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚27'17"669 |
2位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1゚27'19"570 |
3位 |
ネルソン・ピケ | ベネトン・フォード | 1゚27'49"845 |
4位 |
ロベルト・モレノ | ベネトン・フォード | 1゚27'54"979 |
5位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚28'14"856 |
6位 |
マーク・ブランデル | ブラバム・ヤマハ | 1゚28'57"704 |
FL |
ロベルト・モレノ | ベネトン・フォード | 1'55"161 |