1991年 ポルトガルGP


1991年9月20-22日
ポルトガル アウトドローモ・ド・エストリル

予選:3位 決勝:2位


シーズンも4分の3を消化し、チャンピオンシップは大詰めを迎える。 ここから2週連続でポルトガル、スペインと続く「イベリア決戦」が始まる。

ここエストリルはシケインがなく、ヘアピンも比較的R(コーナー半径)が大きく、 中高速のコーナーで構成されている。これはシャシー性能に優れるウイリアムズ勢が有利で、 マクラーレンサイドとしては苦戦が予想された。

しかし金曜予選で上位を占めたのはマクラーレン勢だった。 ベルガー(マクラーレン)が暫定PPを決め、セナが2位につけた。 とはいえ、これはドライからセミウエットへと変わる複雑なコンディションが影響したとも考えられる。

土曜には完全なドライコンディションになり、ウイリアムズ勢が速さを見せる。 特にパトレーゼ(ウイリアムズ)は素晴らしい走り。 自らのマシンをエンジンブローさせてから、 マンセル(ウイリアムズ)のTカーに乗り込みシートを合わせただけでトップタイムをマークした。

予選2番手にはベルガーが滑り込んできた。 セナは特にトラブルなどはなかったが珍しく思うようにタイムアップならず3位。 マンセルは4位。奇しくも、チャンピオンシップを争うセナとマンセルがそろって2列目スタートで、 フロントローにはそのセカンドドライバー達が並んだ。

決勝レースでは、スタート直後から1コーナーにかけてマンセルが少々(かなり?) 強引にマクラーレン勢に割り込み、そして蹴散らしていった。 2コーナーの時点では、マンセルはPPスタートのパトレーゼに続き、 あっという間にウイリアムズの1-2体制が完成した。

セナもベルガーもマンセルのやり方に憤慨していた。セナはレース後に次のように語っている

「チャンピオンシップに関係ないレースでナイジェルがこうしてきたら、事故になっていたよ。 ……今回は僕が慎重に走ったから何もなかったけれど、次回からはわからないね。」  (「最終コーナー 続・天才ドライバーの素顔」より)

レースはそのままウイリアムズ勢が逃げに入った。特にパトレーゼはマンセル以上に元気で、 2位以下を引き離していく。 しばしオーダーは安定していたが、隊列が変わったのは18周目。 パトレーゼがホームストレート上でマンセルを先に行かせた。

マンセル、パトレーゼ、ベルガー、セナの順で、 レースは中盤の30周目前後にタイヤ交換時期を迎えた。 ここで今シーズンをチャンピオンシップの行方に大きな影響を及ぼす事件が発生した。

30周目、マンセルはピットに入りタイヤ交換を行っていたが、 マンセルとピットクルーとの間のコミュニケーションがうまくとれていなかったのか、 右後輪のナットを完全に締め付ける前にマンセルは発進してしまった。 ピットレーンを10mほど進むとマンセルの右後輪はユルユルと外れてしまった。

マンセルは感情を隠すことなくステアリングを叩き、悔しがった。 ウイリアムズのピットクルーは、 とっさのことでピットレーンでタイヤを取り付ける他になす術がなかった。 マンセルはタイヤを装着した後、17位でコースに復帰していった。

マンセルはここから怒涛の反撃で順位を上げていたが、 ピットレーン上の作業がレギュレーション違反になり、 6位走行中の52周目に黒旗失格となった。

セナはマンセルより1周前の29周目にピットインし、 ピットクルーは5.04秒というこのシーズン最高のタイムでコースへ送り出していた。 これでセナはベルガーの前に出て、順位が落ち着くとパトレーゼに次いで2位に上がっていた。

マンセルの脱落後、セナは完全に守りのレースに徹した。 固めのBタイヤを履いていたこともあり、ベルガーが近づくとすぐに先に行かせた。 そのベルガーは飛ばしに飛ばしセナ以上の速さを見せていたが、 その分タイヤにブリスターが発生していたりとペースの変動は激しい。 最終的には38周目にエンジンがブローし、リタイアしてしまった。

レースはそのままパトレーゼ、セナの順でフィニッシュした。 今回はセナらしくない保守的なレースだったかもしれないが、 ベルガーが出入りの激しいレースの末にリタイアしたところや、 ウイリアムズとのマシン性能の差を考えると、無難に走り切るという作戦は妥当だったと言える。 結果的に貴重な6ポイントを獲得、マンセルとの差を24点とした。

これで次のスペインGPの結果次第ではチャンピオンが決まる。 「早くチャンピオンを決めて、スズカでは思い切ったレースをしたい」 と語っていたセナだったが、 スペインでは保守的な作戦が裏目に出て、 さらにマンセルもそう簡単にはチャンピオンは取らせないぞとばかりに意地を見せるのであった。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'13"001
2位
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'13"221
3位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'13"444
4位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'13"667
5位
 アラン・プロスト  フェラーリ  1'14"352
6位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1'14"852


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1゚35'42"304
2位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1゚36'03"245
3位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1゚36'35"858
4位
 ピエルルイジ・マルティニ  ミナルディ・フェラーリ  1゚36'45"802
5位
 ネルソン・ピケ  ベネトン・フォード  1゚36'52"337
6位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1゚36'58"886
 
     
FL
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'18"179




TOPへもどる