1991年 スペインGP


1991年9月26-29日
スペイン カタロニア サーキット

予選:3位 決勝:5位


前戦ポルトガルから2週連続のイベリア決戦はスペインへ。 スペインでは翌年にバルセロナオリンピックを控え、 F1もヘレスからバルセロナ近郊の新設のカタロニアサーキットに闘いの場を移した。 グランプリ直前まで新設工事は完了していなく、突貫作業の末にようやく開催にこぎつけた。

91年シーズンも大詰めを向かえ、セナはチャンピオンに大手をかけてスペインに乗り込む。 マンセルとの順位関係次第ではこのスペインでチャンピオンが決まる。 しかしカタロニアは前戦のエストリルと似ている中高速コースで、ウイリアムズ有利。 マンセル(ウイリアムズ)は、そうは簡単にはチャンピオンにはさせじと立ちはだかり、 セナ自身もナーバスにスペインの週末を過ごすことになる。

木曜日、初開催コース恒例のフリー走行が行われた。 ここで速さを見せたのがデビュー4戦目のシューマッハー(ベネトン)だ。 初コースで慎重にセッティングを煮詰めるベテラン達を尻目にトップタイムをマーク。 大器の片鱗をのぞかせた。

金曜予選、セナは不調気味のエンジンで3位。 土曜になるとコースコンディションが悪化。そしてセナがエンジンブローし路面にオイルが撒き散らかされ、 さらにその上にコースマーシャルが石灰を撒いたことで、タイムアタックは極めて困難な状況になった。 セナは土曜予選だけではトップタイムだったが、 2日間の予選全体では3位に甘んじることになった。

日曜朝のドライバーズミーティングでは、 前戦ポルトガルGPでのマンセルの危険なスタートについて、激しく議論。 セナとマンセルの間に再び緊張が走る。 ちなみに、マンセルはこのスペインGPの前に行われたF1関係者主催のサッカー大会で足をねんざ。 その足をイタズラ好きのベルガーがわざと叩いてマンセルを激怒させるという微笑ましい(!?)エピソードも…。

決勝レースは小雨がちらつく中で行われた。 スタートでは乾いているアウトラインの奇数番グリッドのPPベルガー、3位セナが好ダッシュを決め、 予選2位のマンセルを押しのけてマクラーレンがワン・ツー態勢を築く。

マンセルはスタートで出遅れ、さらにシューマッハーにも抜かれて一時4位に落ちるが、 慌てず騒がず、すぐにシューマッハーをパスし、さらにセナにプレッシャーをかけていく。 そして5周目に入ったホームストレートでマンセルはセナに並びかける。

セナとマンセルは1コーナーまでの数百メートルを、 火花を散らしながら数十センチ~数センチの間隔で併走する。 文字通り、「サイド・バイ・サイド」、「ホイール・トゥ・ホイール」。 結局、マシンに分があるマンセルが1コーナーのブレーキング競争を制したが、 セナファンとしても見応えのあるシーンだった。 日頃衝突が多くこの日の朝も言い合ったセナとマンセルだが、 ドライバーとしてお互いを信頼しているからこそできるバトルだったのではないかと感じた。

マンセルとセナはしばし一定の間隔で周回を重ねていく。 そして10周目、路面は乾きつつあり、2位マンセルと3位セナは同時にタイヤ交換のためピットイン。 マンセルを含め他のほとんどのドライバーが全輪柔らかめのDタイヤを装着する中、 セナだけはグッドイヤーの推薦を押し切り、左に硬めのCタイヤ、右に柔らかめのDタイヤという選択をした。

ピット作業はマクラーレンの方が早く、セナは、先にピットインしていたベルガーの前のトップでコースに復帰した。 しかしセナのペースが上がらない。セナは後ろを走るベルガーを先に行かせて、 自分自身はマンセルを封じ込め、優勝させないという作戦を取ることにした。

ピット作業で遅れたマンセルだったが、すぐにセナに追いつき、再びプレッシャーをかけ始める。 そんな13周目、セナは最終コーナーで単独スピン。うまくコース上に復帰しリタイアは免れたが、7位にまで落ちてしまった。 一方のマンセルはベルガーにもあっという間に追いついた。 ベルガーも必死に抵抗するが21周目にトップを奪われ、マクラーレン陣営の作戦はあっけなく崩された。

セナのタイヤ選択は失敗に終わった。セナは雨を気にするあまり、 保守的なレース運びになってしまった。 コースがドライになったこともありセナは方向を転換し、 無理に上位を狙うよりも完走重視で手堅く走ることにした。 一旦3位まで順位を回復するが、 必要以上に抵抗することなくパトレーゼ(ウイリアムズ)とアレジ(フェラーリ)にかわされ、5位でレースを終えた。

結果的にセナらしくない保守的なレースとなってしまった。 しかしこれは、過去2年間の後味の悪い王座決定を誰よりも気にし、 今年こそきれいにチャンピオンを決めるという想いが強すぎたからではないかと思う。 前戦ポルトガルGPでのマンセルの危険スタートの一件から、セナはピリピリしていたのかもしれない。 そのことがセナの精神的なバランスを一時的に崩した。

しかしセナはすぐに気持ちを切り替える。
「過去4年間、チャンピオンは日本で決まっているし、今度も多分そうなるよ」
チャンピオンシップは5年連続で鈴鹿へ持ち越されることになった。


[ちょっと裏話]

鈴鹿でセナにチャンピオンを決めてほしいフジテレビ側は、スペインで王座が決定しないように、 セナと相性の悪い馬場鉄志アナウンサー(関西テレビ)をスペインGPの実況に起用し、 見事にフジテレビの目論見が当たった、という噂が…。どこかの番組で古館さんが話していました。

そんなことはあくまで噂で、はじめからスペインGPの実況は馬場アナと決まっていたのか? それとも噂は真実か…!?



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'18"751
2位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'18"970
3位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'19"064
4位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'19"643
5位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'19"733
6位
 アラン・プロスト  フェラーリ  1'19"939


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1゚38'41"541
2位
 アラン・プロスト  フェラーリ  1゚38'52"872
3位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1゚38'57"450
4位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1゚39'04"313
5位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1゚39'43"943
6位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1゚40'01"009
 
     
FL
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'22"837




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