1991年 日本GP


1991年10月18-20日
三重県 鈴鹿サーキット

予選:2位 決勝:2位


前戦スペインでは、セナは慎重になりすぎて守りのレースに失敗し、チャンピオンを決められなかった。 過去2年間の後味の悪いチャンピオン決定を誰よりも気にし、 今度こそクリーンにチャンピオンを決める、というセナの思いが強すぎたのかもしれない。

スペインGPから3週間のインターバルが開き、チームはマシンの改良を進めた。 マクラーレンはシャシーのノーズを75mm伸ばした。 これによって安定感が増しコーナーの立ち上がりが速くなり、ストレートでのエンジンパワーが生かされるようになった。 さらにそのホンダエンジンもパワーアップした「鈴鹿スペシャル」を投入。 シャシーとエンジンの相乗効果で、MP4/6は見違えるように速くなった。

コーナーが多い鈴鹿ではウイリアムズ有利と予想されていたが、 そんな下馬評を覆し、金曜日からマクラーレンのセナ、ベルガーがセッションを引っ張っていく。 特にベルガーはセナ以上に好調で金曜、土曜共に最速でPP獲得。僅差でセナ、マンセルが続く。

チャンピオンシップを争うセナ、マンセルとともにこの年の日本GPの主役は、 すでに引退を表明している中嶋悟(ティレル)。 自ら育った鈴鹿での最後のレースは15番グリッドからのスタート。 スタンドには中嶋を応援するフラッグや横断幕が多数見える。

決勝レースはフロントローに並んだマクラーレンの2人が好スタート。 PPのベルガーがそのまま1コーナーを最初に進入し、 セナはベルガーとの間隔をコントロールしながら、マンセルのラインを封じ込め2位を守った。

1位のベルガーはそのままハイスピードで逃げた。 ベルガーが遥か前方に逃げていく一方で、 優勝以外に逆転王座の可能性が無いマンセルをセナがペースをコントロールして付け入る隙を与えない。 マクラーレンはベルガーが逃げ、セナがマンセルを押さえ込んで マンセルを優勝させないという作戦を敢行したのだ。

セナとマンセルは1秒前後の間隔で周回を重ねていく。 そして2人の間隔が少し縮まった10周目の1コーナー、 マンセルはセナの後ろにつきすぎたのか、ブレーキが厳しかったのか、たまらずコースアウト。 セナがあえてマンセルとの差を縮めてコントロール不能に追い込んだ、という説もある。 いづれにしてもこの瞬間、セナの2年連続3度目のワールドチャンピオンが決まった。

マンセル脱落を受けて、セナはペースアップし18周目の西ストレートでベルガーをとらえる。 ここ鈴鹿で好調のベルガーも負けじとセナの数秒後を追走しファステストラップの応酬をするが、排気管が割れペースダウン。 セナとの差が広がっていく。

セナはマンセルのリタイア後は99%の力で走ったのだという。 誰とバトルをするわけでもなく単独走行を続けたが、 鈴鹿で実際にレースを観戦したファンは、この日のセナの芸術的なドライビングが深く印象に残っているようだ。

もう一人の主役である中嶋悟は、ブーツェンと好バトルを見せるなど一時7位を快走していたが、 31周目のS字でサスペンショントラブルが発生しコースアウト、リタイアを喫した。 その謙虚な性格からか、控えめに観衆に手を振る中嶋。 最後の鈴鹿は残念な結果に終わったが、日本にF1を根付かせた「パイオニア」の功績は偉大だった。

レースはセナが1位のままファイナルラップを迎えた。 そしてそのままセナが優勝かと思われたが、セナは130Rから減速してベルガーを待ち、 最終コーナーで合図をしベルガーを先に行かせた。 彼等にはレース前、「1コーナーを先に進入したものが勝ってよい」といった約束をしていたようだ。

賛否両論あったが、それはセナのベルガーのサポートに対しての感謝の現れだった。 さらにベルガーは、日本GPの週末は常にセナと同じかそれ以上のパフォーマンスを見せていて、 勝利に値する走りだったと思う。 レース後、マンセルがセナの腕を高々に上げ栄光を称える。

ベルガーは後に優勝を譲られたことに対する複雑な心境をインタビューで示している。 ベルガーの立場からは全てが全て良かったとは言えないが、過去2年間の後味の悪い王座決定を考えると、 全体的にはクリーンでフェアなレースであり、チャンピオンの決定であったように思える。 中嶋のリタイアも残念だったが、これもモータースポーツの光と影を凝縮した日本GPだったような気がする。 テレビの視聴率も20%を越え、日本のF1ブームが最高潮に達した。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'34"700
2位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'34"898
3位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'34"992
4位
 アラン・プロスト  フェラーリ  1'36"670
5位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'36"882
6位
 ジャン・アレジ  フェラーリ  1'37"140


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1゚32'10"695
2位
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1゚32'11"039
3位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1゚33'07"426
4位
 アラン・プロスト  フェラーリ  1゚33'31"456
5位
 マーティン・ブランドル  ブラバム・ヤマハ  1Lap
6位
 ステファノ・モデナ  ティレル・ホンダ  1Lap
 
     
FL
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'41"532




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