1991年 オーストラリアGP


1991年11月1-3日
オーストラリア アデレード市街地コース

予選:PP(60回目) 決勝:優勝(33回目)


日本でのチャンピオン決定から10日、 セナはリラックスして最終戦の舞台である初夏のオーストラリア・アデレードに乗り込む。 ただコンストラクターズポイントは、僅かではあるがまだウイリアムズの逆転の可能性があるため、 ベルガーと共に必勝を誓う。

また、オーストラリアGP開幕を直前にして、セナの宿命のライバルであるプロストがフェラーリを解雇された。 このシーズンはフェラーリの不振により監督の解任などチーム内のゴタゴタが続き、 最後にチーム批判を繰り返したというプロストもチームを追われた。 デビューした1980年以来のシーズン無勝利で、セナのライバルに躍り出ることもできなかった。

マクラーレンは、見違えるように速くなった日本GPのマシンをベースにアデレード用に改良し、 セナとベルガーがセッションを引っ張っていく。 セナは金曜から最速。土曜午前にはギヤボックスに火災が発生、 さらに雨で午後の予選も完全にコンディションが回復せず多くのドライバーがタイムを更新できない中、 セナは決勝用のタイヤで果敢にアタックしてさらにタイムを縮めた。 4戦ぶり、そして通算60回目のPPを獲得した。

決勝レースは大雨の中スタートしていく。 公道を使用していて水はけが悪く、スタートの時点でもかなり危険なコンディションであった。 そんな中セナとベルガーが飛び出し、マンセル(ウイリアムズ)が続く。 マンセルは3周目にベルガーを捕らえ、トップ独走のセナに少しずつ近づいていく。

このレースで引退の中嶋 悟(ティレル)は、 2年前の雨のアデレード4位入賞・ファステストラップの再現を期待されたが、 スリップしたブーツェン(リジェ)を避けきれず接触しフロントウイングを破損。 ピットでマシンを修復したが、今度は5周目の1コーナーでバランスを崩しコンクリートウォールに接触、 そのままマシンを降りた。 中嶋の20年にも及ぶレース人生は残念な形で終わってしまったが、 F1への道を切り開き、しばし好走を見せた中嶋の功績は偉大だった。

5周を過ぎた頃になると、マンセルはセナに追いつき1~2秒の間隔でマッチレースを繰り広げる。 7周目のブラバムストレートではマンセルはセナに並びかけるが、 前方でアレジ(フェラーリ)とラリーニ(モデナ)がクラッシュしていたので、 マンセルはスピードを緩めてセナの後ろに引いた。

水しぶきで視界が遮られていて危険な状況だったので、当然といえば当然かもしれないが、 このときのマンセルの行動はフェアで、かつ、セナとの信頼関係を見て取れたような気がした。 セナとマンセルだけは異次元の速さと精確さで、再び周回を重ねていく。

スタート時に比べて雨が少しずつ小降りになってきたような感じだったが、 15周を過ぎた頃になると雨は再び強くなり、コースコンディションはさらに悪化していた。 コース上ではスピン・クラッシュが相次ぎ、 なんとピットレーンでもグージェルミン(レイトンハウス)がバリアに激突するなど、極めて危険な状況にあった。

そして16周目、2位を走っていたマンセルがクラッシュ。 マンセルに代わって2位に上がったベルガーも再三スピンをした挙句に最後はコースアウトをしてマシンを止めた。 セナもコックピットから手を振り、「レースができる状況ではない」と訴える。

そして17周目に赤旗が提示されレース中断。 普段は冷静のパトレーゼ(ウイリアムズ)が激しくレース中止を訴える。 レースは再スタート延期を繰り返したが雨はやむ気配がなく、結局このままレースは終了した。 14周終了時のタイムが最終結果となり、史上最短・24分で1991年シーズンが終わった。

14周終了時の順位ということで、マシンを止めたマンセルが2位、ベルガーが3位になった。 マンセルはクラッシュ時に足を痛めたが幸いにも大事には至らなかった。 4位にはピケ(ベネトン)がきっちり走りきったが、これが彼の最後のF1になってしまった。

これでマクラーレンは4年連続でコンストラクターズチャンピオンを獲得、 セナ自身も、ブラジルと共になぜか勝てなかったオーストラリアのジンクスを破った。 14周のレースだったが、セナは全くマシンの挙動を乱すことなく、かつ、異次元の速さで走りきった。 周回数の関係でポイントは半分しか与えられなかったが、10点、もしくはそれ以上に価値のある優勝だった。

セナはF1参戦8年目で3度目のチャンピオン。 名実共に完全にF1史上に名を残す偉大なチャンピオンになった。 1992年以降のウイリアムズの大躍進により、結果的にこの年がセナにとっての最後のチャンピオンになってしまったが、 この後も芸術的なドライビングで数々の伝説的なレースを展開、 誰も到達し得ない更なる高みへと登りつめていくのだった。



予選結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
PP
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  1'14"041
2位
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'14"358
3位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  1'14"822
4位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  1'15"057
5位
 ネルソン・ピケ  ベネトン・フォード  1'15"291
6位
 ミハエル・シューマッハー  ベネトン・フォード  1'15"508


決勝結果

 
ドライバー
チーム
タイム・備考
優勝
 アイルトン・セナ  マクラーレン・ホンダ  0゚24'34"899
2位
 ナイジェル・マンセル  ウイリアムズ・ルノー  0゚24'36"158
3位
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  0゚24'40"019
4位
 ネルソン・ピケ  ベネトン・フォード  0゚25'05"002
5位
 リカルド・パトレーゼ  ウイリアムズ・ルノー  0゚25'25"436
6位
 ジャンニ・モルビデリ  フェラーリ  0゚25'25"968
 
     
FL
 ゲルハルト・ベルガー  マクラーレン・ホンダ  1'41"141

*レースは大雨、コースコンディション悪化により14周終了時点が最終結果




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