1992年　メキシコＧＰ

1992年3月20-22日
メキシコ　アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス

予選：６位　決勝：リタイア

ウイリアムズ圧勝から３週間、マクラーレン陣営は巻き返しを誓いメキシコに乗り込んできた。 しかし肝心のマシンは相変わらず前年の改良型のMP4/6B、 さらにバンピーな路面のこのコースでは、逆にウイリアムズとの差が決定的になってしまう。 予選前から各ドライバー間でコースの危険性が指摘された。 もともとバンピーなコースであるが、さらにその状況が悪化しているという。 そしてその懸念が現実となってしまう。 予選初日のセッション開始早々、セナのマシンがバンプに乗りコントロール不能に陥り、 コンクリートウォールに激突した。 マシンは大破するほどではなかったが、フロント部分には大きなダメージを負い、 セナは自力でマシンから出られずレスキュー隊によって救出された。 セナは救急車で病院に運ばれた。 幸いにもひざの打撲のみであったが、事故の瞬間には骨折も覚悟するほど激しいものだったという。 状況次第では土曜予選の出走は危ぶまれ、 さらにセッション開始直後の事故だったのでタイムも上がってなく（予選27位）、 このままでは決勝レースを走ることもできない。 周囲が心配する中、土曜日にセナはサーキットに姿を見せた。 完全なコンディションとは言えないが、それでもチームメイトのベルガーに0.2秒遅れの６位につけた。 ちなみにこの年ベルガーに予選で敗れたのはこのメキシコＧＰのみである。 しかしチーム全体で見ると、ウイリアムズを追うどころか、 逆にベネトンの２台にも先を行かれてしまった。 レースではセナはスタートで６位から一気にウイリアムズ勢に続く３位に躍り出て、 １コーナーに入っていく。 長いホームストレートでどさくさに紛れて浮上したあたりはさすがだったが、 マクラーレンのマシンはこのコースに合っていないようだ。 MP4/6Bはコースのバンプに翻弄されている。 ウイリアムズはアクティブサスで路面のバンプを吸収するように異次元の走りで逃げていく。 ウイリアムズほどではないが、ベネトンもこのコースを利して好走を見せる。 セナの背後にはシューマッハー（ベネトン）が喰らいつき、 オーバーテイクまでには至らないまでも一定の間隔で走行していた。 しかしシューマッハーは労せずして３位のポジションを得ることになる。 12周目にセナのトランスミッションにトラブルが生じ、スローダウンしてエスケープゾーンにマシンを止めた。 信頼性を重視して旧車を使っていたが、その旧車にトラブルが生じ皮肉な結果になってしまった。 セナはコース脇で走り行くマシンを哀愁ある瞳で見つめる。 それはこれから１年間がとても厳しいものになるということを覚悟しているようにも見えた。 とりあえずは92年型マシンがどの程度なのか、そしていつ投入できるのか…。 レースはそのままマンセル、パトレーゼが２戦連続で1-2フィニッシュ。 ３位にはシューマッハーが初めて表彰台に上がった。 まだ２戦しか消化していないにも関わらず、この後のシーズンの展望を決定付けるようなレースだった。 そのくらい、この年のウイリアムズ＋マンセルは特別だった。 しかしセナもわずかな可能性を信じて、常に人間技でハイテクマシンに挑んでいくのだった。 ちなみにメキシコＧＰは安全面などの理由から、この年を最後にＦ１は開催されていない。

予選結果

決勝結果

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