1992年5月28・30-31日
モナコ モンテカルロ市街地コース
前戦サンマリノGPでマンセル(ウイリアムズ)が開幕5連勝を達成し、
前年にセナが打ち出した開幕4連勝の記録をあっさりと破って見せた。
それも圧倒的な強さで…。 モナコは公道を使ったサーキット。コース幅が極端に狭く、ガードレールに囲まれ、 コース上にはマンホールが点在する…。 こんなコースではドライバーの集中力やマシン・コントロール能力の差が顕著に表れる。 セナはそんなモナコで、この年まで7度の挑戦で4度の優勝を記録している。 さらにデビューした1984年にはトールマンという非力なマシンながら 優勝にあと一歩という2位に入賞し、「セナ」という名を世界に知らしめた。 モナコを得意とし、モナコ3連勝中のセナだったが、 この年ばかりは異次元のハイテクマシンを擁する、 ウイリアムズのマンセルが絶対有利と目されていた。 しかしこのような状況が、F1史上に名を残すドッグ・ファイトを生み出すことになる。 モナコではコース幅が狭くスターティンググリッドが非常に重要になってくる。 セナは何とかフロントロウを奪おうと木曜日から攻める。 午前のフリー走行、午後の公式予選ともに2位。 しかしそれでも1位マンセルからは1秒以上引き離される。 土曜日になるとパトレーゼ(ウイリアムズ)が復調。 セナも健闘したが、リスク覚悟でアタックしミラボーでスピン。 マンセルとのタイム差を0.7秒まで縮めるが、 パトレーゼには0.2秒及ばずこの年の定位置の予選3位に収まった。 決勝レースはセナが抜群のスタートを決めてパトレーゼを抜き2位に上がる。 セナはスタートで、パトレーゼに気付かれないようにギリギリまで抜く気配を見せず、 油断させておいて一気に1コーナーでオーバーテイクした。 マンセルはいつものように逃げるが、セナもマンセルの後方20~30秒差で喰らいついていく。 マンセルに何かあったとき、すぐに逆転できる位置だ。 セナは僅かなチャンスを逃さんとばかりに、一人孤独に、 かつ、マクラーレン・ホンダの性能を100%かそれ以上引き出して、 マンセルに見えないプレッシャーを与えた。 そして残り8周、本当にマンセルのタイヤに空気漏れのトラブルが発生した。 ピットインしている間にセナが前を行く。 この年初めてマクラーレンがウイリアムズの前に出た。ただでさえ1周1.5秒もの差があるのに加え、 マンセルはフレッシュタイヤに履き替えている。 マンセルはあっという間に5秒先を走っているセナを捕らえ、右に左にセナを揺さぶる。 しかしセナはモナコの狭いコース幅と自らの絶妙なライン取りでマンセルに隙を与えない。 一見すると、セナがマシンを左右に揺さぶってマンセルをブロックしているように感じるかもしれないが、 実際は、セナはラインを変えてマンセルを露骨にブロックするのではなく、 効率的なラインを走っているだけだということがわかる。 マンセルがフレッシュタイヤを使っているのに対し、セナは使い古したタイヤで踏ん張る。 シケインではセナはスライドしながらマンセルを封じ込めた。 結局0.2秒差で2台が連なる形でセナがこの年初勝利。グラハム・ヒルに並ぶモナコ5勝目で 「現代のモナコマイスター」と称えられた。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"495 |
2位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1'20"368 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1'20"608 |
4位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'20"895 |
5位 |
ゲルハルト・ベルガー | マクラーレン・ホンダ | 1'21"224 |
6位 |
ミハエル・シューマッハー | ベネトン・フォード | 1'21"831 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・ホンダ | 1゚50'59"372 |
2位 |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1゚50'59"587 |
3位 |
リカルド・パトレーゼ | ウイリアムズ・ルノー | 1゚51'31"215 |
4位 |
ミハエル・シューマッハー | ベネトン・フォード | 1゚51'38"666 |
5位 |
マーティン・ブランドル | ベネトン・フォード | 1゚52'20"719 |
6位 |
ベルトラン・ガショー | ベンチュリ・ランボルギー二 | 1Lap |
FL |
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ルノー | 1'21"598 |