ドライバーの腕が試されるモナコで、4年連続5回の優勝を飾っているセナ。
前年のモナコGPではマシン的に苦しい状況ながらも、
終盤セナがマンセルを押さえ込むという歴史に残るドッグファイトを展開し劇的な勝利をつかんだ。
1993年は最強ウイリアムズに加えてベネトンにも劣るというさらに厳しい状況で苦戦が予想された。
しかしモナコの女神はまたしてもセナにチャンスを与え、セナもそのチャンスを確実に生かしていく。 木曜午前のフリー走行、1コーナーのサン・デボーテでコース脇のバリアに激突。 マシンが微妙にはねていて、アクティブ・サスペンションのトラブルだと思われる。 このときセナは左手の親指を激しく打ち付け、この週末は痛々しく包帯を巻いてドライブする。 土曜予選では、ホットラップ中にシケインの入り口でバンプに乗ってコントロールを失いそのままエスケープゾーンへ。 ケガや不運にも見舞われながらも、何とか予選は3番手につけた。 決勝のスタート、レッドシグナルが灯り、グリーンランプに変わるほんの一瞬前、 PPのプロスト(ウイリアムズ)が微妙に動いたように見えた。 レースは好スタート?を切ったプロスト、シューマッハー(ベネトン)、セナの順で大きな混乱なく始まる。 しかしプロストにフライングの10秒ペナルティー・ストップが課せられ、さらに10秒の停止後、 スタートしようとした時に2度もエンストを起こし、大きく後退していく。 プロストがコースに戻ると、すでにシューマッハーには周回遅れにされ、 さらにタイミングが悪いことにセナの前に出てしまった。 プロストの方がマシン・アドバンテージ的には速く走れるはずであるが、 セナのペースの方が速い。セナは「道を譲れ」と腕をあげ抗議し、 プロストは抵抗することなくレコードラインをあけ、セナにも周回遅れにされた。 1位はシューマッハーに変わり、2位セナに15秒もの差をつけて快走を続けていたが、 33周目、アクティブ・サスペンションのトラブルでリタイアする。 セナが労せずしてトップに立った。 確かにライバルの後退にも助けられたが、セナは前年と同じようにつかんだチャンスを確実に生かしていった。 セナは中盤のタイヤ交換時にも首位を譲らず、 緊張の連続のモナコのコースで安定感のある危なげない走りで周回を重ねていった。 結局セナはそのままトップでチェッカーを受け、 モナコGP史上最多の5年連続6度目の優勝。2位にはデーモン・ヒル(ウイリアムズ)。 デーモンの父は、それまでの記録であるモナコ通算5勝の「初代モナコマイスター」グラハム・ヒル。 レース後、デーモンの「もしも父が生きていたら、真っ先にアイルトンを祝福していただろう」の言葉には感動した。 マシン的にはウイリアムズ、ベネトンに劣り、手を負傷しているにもかかわらず、 我慢の走りで「モナコマイスター」の称号を完全に手に入れた。 レース序盤にセナに周回遅れにされ、22位まで後退したプロストが、レース終盤にはセナに再び追いつき、 セナを抜くことなく4位まで順位を上げていたのがなんとも奇妙な光景だった。 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
PP |
アラン・プロスト | ウイリアムズ・ルノー | 1'20"557 |
2位 |
ミハエル・シューマッハー | ベネトン・フォード | 1'21"190 |
3位 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・フォード | 1'21"552 |
4位 |
デイモン・ヒル | ウイリアムズ・ルノー | 1'21"825 |
5位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1'21"948 |
6位 |
リカルド・パトレーゼ | ベネトン・フォード | 1'22"117 |
ドライバー |
チーム |
タイム・備考 |
|
優勝 |
アイルトン・セナ | マクラーレン・フォード | 1゚52'10"947 |
2位 |
デイモン・ヒル | ウイリアムズ・ルノー | 1゚53'03"065 |
3位 |
ジャン・アレジ | フェラーリ | 1゚53'14"309 |
4位 |
アラン・プロスト | ウイリアムズ・ルノー | 1Lap |
5位 |
クリスチャン・フィッティパルディ | ミナルディ・フォード | 2Laps |
6位 |
マーティン・ブランドル | リジェ・ルノー | 2Laps |
FL |
アラン・プロスト | ウイリアムズ・ルノー | 1'23"604 |