1994年　パシフィックＧＰ

1994年4月15-17日
岡山県　ＴＩサーキット英田

予選：ＰＰ（64回目）　決勝：リタイア

開幕戦を不本意な単独スピンで終え、セナは雪辱を誓い日本に乗り込んできた。 第２戦パシフィックＧＰは岡山県・ＴＩサーキット英田で行われる。 しかし山あいにある英田は曲がりくねった低速コースで、 マシンの安定感がありコーナーが速いベネトンが有利に思われた。 新コース恒例の木曜の特別セッションではシューマッハー（ベネトン）がセナに１秒以上の差をつけて、 ベネトンの優位性を示す。しかしセナは金曜午前のフリー走行では一番時計。 午後の予選でも決して安定感のあるマシンではないウイリアムズを、 ギリギリ、そして完璧にコントロールしてトップタイムをマークした。 そのセナのタイムを破ろうとセッション終盤にシューマッハーがコースイン。 しかし実況席にいた中嶋悟氏は、シューマッハーの１コーナーの飛び込みを見ただけで、 「あ～ダメだ」の声。成長著しいシューマッハーだったが、 プレッシャーのかかる大一番やドライビングの繊細さなど、 細かな部分でセナとの差が見て取れたような気がした。 土曜日は気温が上昇し、ほとんどのドライバーが金曜のタイムを上回れない。 セナはＰＰを確信し、様子を見ながら最後は日曜の決勝レースに向けてスロー走行しタイヤの皮むきをする。 しかしこの土曜予選では気になるシーンがあった。同じウイリアムズに乗るセナとヒルが、 全く同じコーナーで同じようにスピンしたのだ。 またそのスピンは、ブラジルでのセナのスピンにもよく似ているように見えた。 「僕たち２台とも同じ場所でスピンしたのは奇妙だね。 よく理解できないよ。マシンの調子は良かったんだ。 コーナーへも、この週末最高のポジションから正しい方向へ入っていった。 あんなトラブルが起きるはずがないのに。」 ウイリアムズのリアのアンダーウイングは「へ」の字型をしている。 これによってマシン下部から吸い上げられた空気の流れで大きなダウンフォースを得られるが、 その一方で一度マシンが不安定になると一気にコントロールを失ってしまう。 その改善策としてウイリアムズは、フロントノーズの左右に小さなウイング状のフィンをつけて、 フロントのダウンフォースを強くし、マシン全体のバランスをよくしようとした。 しかしこれはあくまで応急処置で、ウイリアムズのシャシーの基本的性質は相変わらず不安定である。 これらのことが相次ぐ不可解なスピンにつながったと考えられる。 決勝レース前のフォーメーションラップでは、先導するオフィシャルカーのペースが遅すぎて、 タイヤを十分に温められなかったとセナは語っている。そのことが影響したのか、 スタートでは激しくホイールスピンし、シューマッハーに１コーナーを奪われた。 それだけならばまだよかったが、その直後にハッキネン（マクラーレン）がセナに追突。 スピンしながらグラベルに押し出されたセナのマシンの側部に今度は、 テスト中にケガをしたアレジの代役であるラリーニ（フェラーリ）が接触。 セナはその場でマシンを降り、時々コース上を見ながらトボトボと歩いていく。 そしてハッキネンのドライビングにクレームをつけるためにそのままコントロールタワーに向かった。 レースはその後シューマッハーが、２位ベルガー以外を周回遅れにする独走で連勝。 バリチェロは初表彰台。 セナにとっては思わぬ開幕２戦ノーポイントに終わってしまった。 そして寂しげにピットに戻るその姿が、日本で見る最後のセナの姿になってしまった。

予選結果

決勝結果

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