セナ没後25年特別企画

セナのベストレースを考える



1. はじめに

セナは常にマシンのポテンシャルを最大限に引き出し、芸術的なドライビングでマシンのアドバンテージがあるときはもちろん、 不利な状況でも劇的な勝利や、期待されている以上の成果をあげてきた。

そんなセナの多くの名レースの中でも、特に素晴らしいもの、ベストレースというものを考えていきたい。 そしてみなさんの心の中にあるベストレースと比較していただきたいと思います。



2. ベストレース ノミネート

セナのF1全161戦の中から漠然とベストレースを挙げるのは難しいので、 各年1~2戦ずつ印象深いレースを独断と偏見でノミネートさせていただきます。 種類別にみると、

・不利な状況の中での優勝や、期待された以上の成績
・手に汗握る好バトル
・メモリアルレース
・有無を言わさない完全優勝

などに分けられます。


【1984年】
モナコGP セナ伝説の始まり。

【1985年】
ポルトガルGP 大雨の中の初優勝

【1986年】
スペインGP マンセルに0.014秒差の勝利

【1987年】
アメリカGP 不利なマシンで公道コース制覇

【1988年】
ハンガリーGP プロストと好バトル
日本GP 初のワールドチャンピオン

【1989年】
スペインGP 追いつめられての完全勝利

【1990年】
アメリカGP アレジと好バトル
イタリアGP 敵地で完全勝利

【1991年】
ブラジルGP 最後は6速だけで地元初優勝
ハンガリーGP 本田宗一郎氏に捧げる勝利

【1992年】
モナコGP マンセルとデットヒート

【1993年】
ヨーロッパGP オープニングラップで4台ごぼう抜きで優勝



3. 私が選ぶセナの名レース ベスト10

完全なる独断と偏見で選ばせていただきました。 みなさんの考えるベストレースと比較していかがでしょうか? なお、特に7位以下は順番の甲乙つけがたく、印象度の度合いで一応順位をつけさせていただきましたが、 全て同じ「ベスト10入り」くらいな感じで見ていただけたらと思います。


第10位 1987年アメリカGP

ウイリアムズ・ホンダとのマシンの差は歴然だった。 にもかかわらず、ライバルのミスやトラブルに乗じたわけでもなく、 タイヤ無交換作戦への変更で活路を見いだし、セナの腕でもぎ取った勝利。


第9位 1990年アメリカGP

アレジとのフェアなバトル。1993年カナダGPもそうですが、 この二人はお互いを信頼し合っているからこそのバトルのように思えます。 純粋にレースを楽しんでいるようにも見え、シーズンオフのゴタゴタを吹き飛ばすレース。


第8位 1988年ハンガリーGP

プロストと抜きつ抜かれつのバトル。 セナが抜き返した瞬間が、プロストからセナへの覇権交代の瞬間のようにも思えた。


第7位 1991年ハンガリーGP

本田宗一郎氏が亡くなった直後のレース。 マシン的にも決して楽な状況ではなく、ウイリアムズ勢とのマッチレースで、さらにタイヤの異変もあったが、 セナの腕と判断力、そして本田氏に捧げようとする精神力で成し遂げた優勝。


第6位 1984年モナコGP

本格的なセナ伝説の始まり。 雨のモナコで中堅チームの新人が、次々にトップドライバーを抜いていくという衝撃。 レースが続いていたらどのような結果になっていたのか!? プロストやべロフとの凄まじいバトルが見られたのかも!?


第5位 1985年ポルトガルGP

大雨の中、3位以下を周回遅れにしての初優勝。 完全優勝(優勝、PP、FL、全周回1位)という圧倒的レース内容と、 初優勝のメモリアル要素を加えて5位に選定。


第4位 1992年モナコGP

このレースを1位に挙げた方もたくさんいると思います。 もちろん私も深夜に(ほぼ)リアルタイムで観ていた中では、興奮度は1位です。一気に目が覚めました! 4位にしたのは、上位3レースと比較するとライバルのトラブルの影響が大きかったためです。 とはいえ、いつでも逆転優勝できる位置にいるために、スタート直後にパトレーゼを抜いて2位に上がり、 その後もできるだけマンセルとの差をキープしていたりと、勝つための「準備」をして自ら勝利を引き寄せました。

また後から冷静に見返すと、セナの腕ならばそれほど大変なレースではなかったのではと思ってしまったからです。 本当はそんなことはなく、とてつもないレースだったとは思いますが、 あまりにも完全でかつフェアにマンセルをブロックしていたので、その完成度ゆえに「セナならば難しいことではなかったのかな」と感じてしまったほどです。
(決してこのレースが大したことなかったという意味ではありません。)


第3位 1988年日本GP

初のワールドチャンピオンを決めた鈴鹿でのレース。 しかしすんなりとは決まらず、スタートで出遅れ、そこから挽回し、 プロストを力で抜き去るという印象的なレースでもありました。 「日本は第2の故郷」…セナと鈴鹿は特別な関係でした。


第2位 1991年ブラジルGP

なかなか勝てなかった地元ブラジル。 レース序盤は急速に力をつけてきたウイリアムズとマッチレース。 マンセル脱落後はギアが次々と抜けていくトラブルで、 起伏が激しいインテルラゴスを雨の中、最後は6速だけで走りきるという離れ業。 感動の地元初優勝。もしかしたらセナ自身の中では一番うれしかったレースだったのかもしれませんね。


第1位 1993年ヨーロッパGP

マシン的には最強ウイリアムズや、最新型フォードエンジン搭載のベネトンの次だったと思います。 予選4位で、さらにスタート直後は出遅れて一瞬5位に落ちますが、 そこから圧巻の芸術的ドライビングでシューマッハーやプロストなど次々と抜き去り、オープニングラップを1位で戻ってきます。 F1のみならず、モータースポーツ史上最も偉大な1ラップと言っても過言ではないでしょうか。


4. 真のベストレース

真1位 1990年イタリアGP

ここまで10レースを挙げてきましたが、どうしても激しいバトルやメモリアルレース等、印象度の高いレースを選出しがちになってしまいました。 しかし、派手なレース展開ではないにしても、完璧すぎて目立たない「真のベストレース」があるように思えます。

PP、FL、全周回1位での完全優勝を「グランドスラム」と言うそうですが、セナはこのグランドスラムを4回達成しています。 その中でも1990年イタリアGPは、フェラーリに乗るプロストとずっと数秒差でのマッチレースで、 そんな厳しい状況下でも隙を見せずに完全優勝を成し遂げました。 また、フェラーリの地元で敵地にも関わらず、予選ではセナのあまりにも素晴らしい走りにフェラーリファンも熱狂し賞賛していたという、 敵をも唸らす完璧な走り…このレースを「真のベストレース」に挙げたいと思います。



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